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本品は中国清朝道光年間(1821–1850年)に南京(景徳鎮)で焼成された染付扇形の菓子皿二枚揃いです。扇形という伝統的モチーフに古染付の藍色で花鳥風月文を配し、茶席の干菓子皿や室内装飾用として用いられました。大小二枚が揃うことで利用と鑑賞の両面で趣が深まります。
道光期は清朝中興の時代にあたり、陶磁器では五彩や粉彩が流行を極める一方、古染付や青花を意識した復興様式も支持を集めました。南京で制作された染付磁器は江戸末期の日本にも数多く輸入され、煎茶や茶席の道具として珍重されました。
扇形皿は日本の扇面画に倣った形状で、口縁が緩やかに反り、下部が細く絞られて優美なシルエットとなります。皿面には梅枝と小禽、流水文を藍一色で描き、余白を生かした構図が特徴です。絵付けには太筆と細筆を併用し、筆致の濃淡で立体感を表現しています。
胎土には景徳鎮磁石土を使用し、高温還元焼成で緻密な白地を得ています。素焼き後に呉須(コバルト顔料)で下絵を施し、本焼成で藍色が深く発色。釉薬は透明度が高く、貫入(かんにゅう)やヘアラインが時代景色として評価されます。
裏面高台内には「大清道光年製」五字の薬研彫り款があり、書体・彫りの深さ・釉かかりとの整合性で真贋を判定します。後補刻印や偽銘は周縁部の釉剥がれや違和感から見分けられ、保存状態と来歴資料の併用が鑑定の鍵となります。
道光期真作で二枚揃い・保存良好なものは150万~300万円程度。片傷や小チップがあるものは80万~150万円、来歴不明や偽銘疑い品は30万~80万円が相場となります。
染付磁器は急激な温度変化や強い衝撃を避け、室温20℃前後・湿度50~60%を維持します。使用後は柔らかな布で乾拭きし、重ね置きや直射日光を避けてガラスケース内に展示・保管すると長期保存に適します。
南京染付扇形菓子皿二枚(道光年製)は、染付筆致、造形美、款識、保存状態、来歴資料の五要素が揃うことで骨董的価値が最大化します。干菓子皿としての実用性と、鑑賞対象としての美術工芸品性を併せ持ち、今後も茶道具コレクターや中国陶磁愛好家から高い評価を受け続ける逸品と言えるでしょう。
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