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本品は、江戸時代末期から明治期にかけて制作されたと思われる「古ひょうたん提物」3点のコレクションです。ひょうたんをそのまま利用した装飾具で、茶道の香合や花入として用いられた他、神仏への供物を吊り下げる用途にも使われました。自然の曲線と素材感を活かした素朴な風合いに、漆や螺鈿、金彩などの装飾を加えた意匠が各点ごとに異なり、趣味性と実用性が融合した逸品です。
ひょうたんは古来、魔除けや招福の縁起物として中国から日本に伝わり、弥生時代から水筒や容器として利用されました。江戸時代には茶人や文人が庭先に提げて風雅を楽しむ「提物」として発展し、茶席や床の間の調度品として重用されました。現代では生活道具としての機能を超え、骨董愛好家の間で高い評価を得ています。
本3点のひょうたんはそれぞれ、表面に漆を塗布した上で蒔絵や螺鈿を施したもの、朱漆を基調に金彩文様を描いたもの、素地を生かしつつ墨書で詩文をあしらったものが含まれます。漆面は数十回の塗り重ねによる厚みと光沢があり、螺鈿はアワビ貝の虹色層を薄く磨き出して葉文や流水文を表現。金彩は胡粉や金泥を用い、茶花や吉祥文様を繊細に描写しています。
漆面は乾燥と紫外線に弱いため、直射日光や過度な乾燥・多湿を避け、室温20~25℃・湿度40~60%を保つ環境で保管します。紐や金具は劣化しやすく、展示時には風通しの良い袋状ケースを用い、金属部分には防錆処理を施すことが望ましいです。
古ひょうたん提物3点は、江戸後期から明治期の茶道具・装飾具としての機能と、漆工・螺鈿・蒔絵など多様な工芸技法が融合した希少な骨董品です。制作年代や来歴、保存状態、意匠の完成度が価値を大きく左右し、完全品はコレクター市場で高額取引されます。今後も日本の伝統工芸と茶文化を語る上で重要な資料として注目され続けることでしょう。
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