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本品は江戸後期に有田で製作された古伊万里染付磁器の壺で、徳利形の胴部に牡丹文を染付し、蓋と胴底に金具(摘み・金具枠)を付した異色作です。徳利型のフォルムは酒器としての実用性を想起させつつ、壺としての重厚感と意匠性を兼ね備え、茶席の花入や室礼の飾り壺にも用いられた逸品です。
古伊万里染付は17世紀末に有田で誕生し、幕府・大名家や海外にも輸出されました。江戸後期には藍の濃淡を用いた牡丹絵が流行し、徳利形の壺に応用されることで和洋折衷の需要に応えました。蓋金具は輸出用陶磁器の保護を兼ね、また室内装飾としての格式を高める機能を持ちます。
胎土は有田産の瓷石土を用い、轆轤または型押しで成形。素焼き後に酸化コバルト顔料で牡丹と唐草文を筆描きし、透明釉を掛けて本焼成(約1,280℃)。金具は銅合金または真鍮製で、壺口・高台裏・蓋摘みに取り付けられ、金鍍金仕上げを行っています。
徳利型の胴は細身で口縁はすぼまり、肩部が張る優美なプロポーション。染付牡丹は大輪を中央に配し、緩やかな筆致で花弁や葉脈を表現。金具の摘みは蓮弁形、胴底部の金具枠は蓮華文透かし装飾を施し、磁器と金属のコントラストが映えます。
保存良好・金具完備の古伊万里染付牡丹絵徳利型壺は、共箱付で100万~200万円が相場。金鍍金の劣化が少なく、染付文の発色が優品と認められるものは250万~350万円以上となる場合があります。
磁器は急激な温度変化に弱いため、電子レンジ・食洗機は避け、使用後は中性洗剤で手洗いし、柔らかな布で水気を拭き取ります。金具は錆止め油を薄く塗布し、乾燥した布で軽く拭いて保管。直射日光や高湿を避け、湿度50%・室温20℃前後の環境で保管すると長期保存に適します。
古伊万里染付牡丹絵徳利型金具付壺は、染付・金具・造形・保存状態・来歴資料の五要素が揃うことで真の骨董的価値を発揮します。有田の伝統技法と装飾金具の融合が生んだ稀少品として、茶道具愛好家や骨董コレクターから今後も高い評価を受け続けるでしょう。
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