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古盆朱泥鉢(こぼんしゅでばち)とは、盆栽や水石飾りなどを盛るために用いられた朱泥(赤土)製の鉢(鉢器)で、中国宜興窯の朱泥技法を源流としながら日本国内でも愛用された骨董品です。朱泥の深い赤褐色とマットな質感が特徴で、盆栽の緑や苔、石の色彩を際立たせる役割を果たします。
朱泥鉢は宋~元の宜興紫砂壺と同系統の赤泥(朱泥)を用いた陶器として発展し、江戸時代には茶人や盆栽愛好家の間で輸入・模倣が行われました。特に江戸後期以降、盆栽文化の隆盛とともに国内窯でも朱泥を再現した鉢が制作されるようになり、「古盆朱泥鉢」と呼ばれる古作が市場に流通しました。
素地には鉄分を多く含む赤土を使用し、轆轤(ろくろ)挽きまたは手びねりで成形します。素焼き後、朱泥釉(鉄分を多く含む酸化釉)を薄く掛け流し、約1,200℃前後の酸化焼成で焼き締めます。釉薬の厚みや窯内の位置によって、ムラや釉垂れ、微細な結晶斑が生じることが評価の対象となります。
形状は丸鉢、長方鉢、舟形鉢など多彩で、大振りの盆器から小振りの桐箱用飾り鉢まで存在します。縁の立ち上がりの角度や切り立ての高台、底穴の有無などは用途や流派によって異なり、盆栽鉢ならではの独特なプロポーションが楽しめます。
真作を見分けるには、朱泥地の発色や釉面の微妙な艶、素地の収縮による微細な貫入、轆轤目の残り具合を観察します。釉裏や高台裏の焼成跡、薬掛けの抜けや窯疵(キズや小穴)の自然さも、古作としての証左となります。
底部に「朱泥」「宜興」「両山渠」などの刻印・書款が見られるものや、後補として再銘された例もあります。箱書きや購入時の古書類が揃うと来歴証明となり、鑑定価値を大きく高めます。
江戸期の輸入朱泥鉢や国内写しの古盆朱泥鉢は、状態や銘の有無、来歴書付によって数万円~数十万円で取引されます。完品かつ高台の摩耗が少ない優品は数十万円以上、銘印・共箱付きのものはさらに高額となる傾向にあります。
朱泥鉢は、盆栽を引き立てるだけでなく、単体での鑑賞用オブジェとしても人気です。赤褐色の土味と焼成の景色は一鉢ごとに異なり、複数並べて季節や樹種に合わせる楽しみがあります。掛軸や手植え石との組み合わせも映えます。
陶器は衝撃や急激な温湿度変化に弱いため、展示時はクッション材を敷いた棚に安定して置き、直射日光を避けて保管します。鉢内に水を張ったまま長期放置すると釉面の貫入に水垢が入りやすいため、使用後は乾燥させてから収納してください。
古盆朱泥鉢は、赤泥の深い風合いと焼成景色がもたらす独特の美を備えた骨董品です。素地・釉調・形状・刻印・来歴を総合的に鑑定し、適切な保存管理を行うことで、その歴史的・芸術的価値を長く楽しむことができます。
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