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唐三彩(とうさんさい)婦人俑(ふじんよう)は、中国・唐代(7~9世紀)の陪葬陶俑の一種で、鮮やかな三色釉(緑・褐・乳白)によって仕上げられた女性像です。豪華絢爛な着装や文人趣味を感じさせるしなやかな姿勢が特徴で、唐王朝の国力と国際的な文化交流を象徴する工芸品として評価されます。
唐三彩は、都・長安の近郊で生産された陶器で、主に高官や貴族の墓に陪葬されました。婦人俑は、宮廷の衣装をまとった貴婦人や踊り子をかたどり、来世での供養や繁栄を祈願する意味が込められています。シルクロードを通じて西アジア・中央アジアの技法や文様が取り入れられ、多彩な文様と造形の融合が見られます。
胎土には長安周辺の鉄分を含む粘土が用いられ、素焼き後に三色釉を掛けて高温(約1,300℃)で焼成します。緑釉は銅、褐釉は鉄、乳白釉は鉛カルシウムによって発色し、流動する釉薬が自然な景色を形成。着衣の襞や表情は型押しと手彫りを組み合わせ、焼成時の釉薬のにじみが唐三彩独特の味わいを生み出します。
婦人俑は立像・座像があり、上半身をやや斜めにひねる「ひねり姿勢」や、手に儀仗(ぎじょう)具を持つものが典型。衣紋(えもん)の襞は力強く深い彫りで表現され、腰まわりや袖口には緑・褐・乳白の三色が巧みに組み合わされます。表情は穏やかで、目や唇は黒釉で微細に描かれています。
本時代作の良品は保存状態により500万~1,500万円級が相場。小さなチップや補修跡があるものは200万~500万円、保存難ありや後世の写し品は50万~200万円程度で取引されることがあります。来歴が明確で考古学的価値が高いものはさらに高額となります。
唐三彩は釉薬層がもろいため、直射日光や急激な温湿度変化を避け、室温20℃前後・湿度50~60%の環境で管理します。埃は柔らかな筆で優しく払い、水洗いは厳禁。展示時は衝撃防止の支持具を使い、振動や揺れの少ない場所に設置してください。
唐三彩婦人俑は、唐代の陶工技術と国際文化が融合した逸品です。釉薬の発色、造形の完成度、焼成景色、保存状態、来歴資料の五要素が揃うことで真の骨董的価値が発揮され、東洋古陶磁コレクターや美術館から今後も高い評価を受ける逸品と言えるでしょう。
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