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本品は、刀身に作者銘を刻んだ在銘刀一振を、昭和期以前の実戦・儀礼用軍刀拵(ぐんとうこしらえ)に納めた一式です。軍刀拵は刃を護るだけでなく、軍装具としての意匠と当時の精神性を映し出します。刀身と拵各部の作り込み、銘文・刻印、保存状態、来歴資料などが骨董的評価の要点となります。
日本軍刀は明治以降に西洋流儀を取り入れつつ、古来の日本刀鍛錬技術を継承して発展。陸軍・海軍の軍刀拵には規格がありながら、軍刀工、下士官将校用、高級将校用など階級や年代により拵の意匠差が生まれました。戦場用の実戦刀身と儀礼用の拵が組み合わさる点に、歴史的・文化的意義があります。
刀身は鎬造り、板目地鉄に等間隔の小互の目乱れ刃文を焼き、沸気(にえ)が盛んに立つ匂口(においぐち)が観察されます。茎(なかご)には「□□住兼義」など作者銘が陰刻され、鑢目(やすりめ)は勝手下がり、茎尻は栗尻仕立てです。特別保存刀剣認定書または保存刀剣鑑定書が付属すれば価値は一層高まります。
拵(こしらえ)は、朱漆塗の鞘(さや)に龍図や菊花紋を金箔捺し、柄巻は鮫皮に正絹下緒。柄頭(つかがしら)・鍔(つば)・鐺(こじり)には鉄製鍍金細工や象嵌が施され、軍装具としての迫力と装飾性を兼ね備えます。鐶(かん)や鍔の意匠は、製造工場(皇室御用品製造所など)や製造年代を示唆します。
特別保存刀剣認定の在銘刀と純正軍刀拵一式は800万~1,200万円が相場。保存良好で来歴文書が揃うものは1,200万~1,500万円を超える場合もあります。保存刀剣・無鑑定刀身の場合は400万~700万円、拵に大規模な補修や復元があると300万~500万円程度になります。
刀身は使用後毎回拭い油(ちょうじ油)を塗布し、室温20℃前後・湿度40~60%の安定環境で保管。拵いの漆塗りや金箔は乾燥割れと剥落を避けるため直射日光を避け、埃は柔らかな刷毛で払いましょう。共箱や鑑定書は刀とともに保管し、来歴の一貫性を維持してください。
在銘一振と軍刀拵入の一式は、刀匠格・地刃仕立・茎銘・拵装飾・保存状態・来歴資料の六要素が揃うことで、骨董的価値が飛躍的に高まる逸品です。軍装具としての意匠美と実戦刀の鍛錬技術を併せ持ち、武具コレクターや歴史資料収集家から今後も高い評価を受け続けることでしょう。
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