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「堤物」とは、江戸時代に男性が印籠や煙草入れ、巾着などの携帯品を腰から吊るして持ち歩いた装身具・実用品の総称です。これを帯から下げる際に使用されたのが「根付(ねつけ)」であり、実用性と美術性を兼ね備えた小彫刻として、日本独自の工芸品として世界的に評価されています。
堤物は、印籠(薬入れ)、煙管筒(キセル筒)、煙草入れ、金具、緒締め(留め具)などで構成され、各部に彫金や蒔絵、漆芸、象嵌、彫刻などの精緻な装飾が施されました。装身具としての美しさと、実用品としての機能を兼ね備えており、現代では骨董品や美術品として高い評価を得ています。
キセルは、吸い口(吸口)、火皿、羅宇(らう)と呼ばれる管部分で構成され、素材には金、銀、銅、竹、木、陶器などが使われました。江戸時代には装飾性の高いキセルが多数制作され、特に金工家による彫金入りの銀製キセルは、高級品として武士や町人の間で人気を博しました。
煙管筒はキセルを携帯するための筒状の入れ物で、革・漆・金属・竹・木など多様な素材が使用されました。特に蒔絵や彫金、螺鈿細工が施されたものは美術工芸品としての価値が高く、武家や富裕商人の贅沢品として競って収集された逸品も多数現存しています。
印籠は、本来は複数の小箱を紐で束ねて漆器で作られた小型の薬入れで、携帯用の薬を収めて持ち運ぶためのものでした。蓋付きの段重ね構造で、中子(なかご)と呼ばれる箱が数段重なり、紐で締めて帯から吊るして携行されました。
小川破笠、勝川春章、柴田是真など著名な蒔絵師による印籠は特に価値が高く、作者銘があるものは真贋判定や評価の上で非常に重要なポイントです。美術館級の作品には数百万円〜数千万円の価格がつくこともあります。
根付は象牙、木、鹿角、金属、陶器など様々な素材で作られ、小さな彫刻作品として細密な技法が施されています。題材には動物、人物、伝説、妖怪、吉祥文様などがあり、時代背景や風俗を映し出す彫刻美術としても高い評価を受けています。
明治時代以降、根付はヨーロッパで装飾小物として人気を博し、現在でも国際的なコレクター市場で取引されており、オークションでも高額落札例が多く見られます。
現在でも堤物や根付は、骨董収集家や工芸美術愛好者を中心に人気があり、茶室や床の間の飾り、外国人への贈答品としても注目されています。保存の際は湿気や直射日光を避け、桐箱や布で包むなど、工芸品としての扱いが推奨されます。
キセル、煙管筒、印籠といった堤物および根付は、江戸時代の装身具でありながら、高度な職人技と美意識が込められた工芸作品です。素材、装飾、作者、保存状態が価値を大きく左右し、近年ますます評価が高まる骨董品分野のひとつとして、今後も多くの関心を集めることが期待されます。
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