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堤物煙管入れは、江戸時代から明治期にかけて喫煙文化とともに発展した携帯用煙管・刻み煙草入れで、腰から提げる「提物(さげもの)」の一種です。素材に漆塗木地や象牙を用い、実用性と装飾性を兼ね備えた装身具として武士から町人まで愛用されました。
本コレクションは、象牙本体に金銀象嵌や彫金、透かし彫りを施した煙管入れ三点です。各品は大きさ約7~9cm、厚さ1.5~2cm程度。蓋の摘みや提環(提げ環)に純金・純銀の金具が取り付けられ、象牙独特の白銀色の地肌と金銀の輝きが荘厳な佇まいを見せます。
象牙は硬度高く、密度が緻密な部位を厳選して削り出します。彫刻師は鏨で象牙に細密彫をほどこし、金線や銀線を象嵌。その後、金具師が純金・銀板を切り出して貼り付け、彫金や鏨彫りで文様を刻します。漆を薄く塗布して繊細な保護膜を作り、耐久性を高めつつ艶を演出します。
文様は松竹梅や波龍、菊桐など吉祥図案が中心。蓋の摘みには龍頭や獅子頭、提環にも透かし唐草文が見られ、光の当たり方で金銀が繊細に反射します。象牙の自然な網目模様「シュレーゲル線」を活かしつつ、金銀の配置バランスが全体の美を引き立てます。
象牙製品は乾燥や直射日光でひびが入りやすいので、温度20~25℃、湿度50~60%の環境を保ちます。金具は汗や湿気で腐食しやすいため、使用後は柔らかい布で乾拭きし、専用の共箱や防湿箱で保管します。漆面の傷防止に手袋使用を推奨します。
象牙金工金銀金具付きの堤物煙管入れ三点は、象牙の希少性と金銀象嵌の高度な技術が融合した逸品です。真贋や来歴、保存状態が評価を左右し、完全品は骨董市場で高額取引されます。今後も日本の喫煙具文化と漆工・金工芸術を語る上で重要な資料として愛蔵され続けるでしょう。
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