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大鎧具足一式とは、武士の正式な戦装束として平安末期から室町時代にかけて用いられた重厚な鎧(よろい)と兜(かぶと)、佩楯(はいだて)、籠手(こて)、草摺(くさずり)などの付属品を含む装備全体を指します。兜鉢(かぶとはち)に鍬形(くわがた)や前立を飾り、威厳と家紋の象徴性を強調した格式高い骨董品として、甲冑収集家から高い評価を受けます。
大鎧は源平合戦期に確立し、中世の武家社会で身分と戦闘力の証として発展しました。鎧具足は合戦用から儀式用へと移行し、桃山時代以降は茶道具や屏風絵のモチーフとして鑑賞対象にもなりました。大名や将軍家伝来の鎧は歴史的来歴を示す重要文化財級の骨董品となります。
大鎧具足一式は、主に7つの要素から成ります。兜・大鎧(胴丸/胴懸)・佩楯・籠手・草摺・脛当・沓(くつ)です。胴は鉄板を革糸で編み合わせ、漆塗りと金箔押しで装飾。草摺には縅(おどし)糸の色彩や三段五段で格式が表されます。兜は吹返や吹立を備え、鍬形の金工細工が作家の技量を示します。
鉄板には玉鋼を使用し、鍛錬による強靭性を確保。漆塗りは何度もの下地塗りと上塗りを重ねる本堅地。金箔や金具は本金メッキや鍍金で耐久性を高め、鍬形や前立は鋳物・彫金・彫眼象嵌で細密に仕上げられます。縅糸は絹糸が基本で、鮮やかな色彩と堅牢な編み目を持ちます。
真贋鑑定では、鉄地の鍛え目や漆面の経年貫入、金箔の剥落痕など自然な経年変化を確認します。縅糸の色褪せや編み目の傷み具合、革紐の乾燥割れも来歴を示す重要な手がかり。鍬形裏の銘や摺文(すりもん)、家紋の打ち出し細工から製作年代や作者を特定します。
江戸時代以前の大鎧具足一式は、状態と来歴により数百万円から数千万円を超える価格で流通します。特に源義経伝来、徳川家伝来、伊達家伝来などの来歴書付がある鎧は国宝級の扱いとなり、オークションでは億単位の落札例もあります。
大鎧は一式揃うことで歴史的物語性が増し、展示美術品としての迫力を持ちます。甲冑師の技術史や武家文化を視覚化するオブジェとして、博物館やプライベートコレクションで重宝されます。屏風や写真撮影、茶会の主題としても活用価値が高いです。
陳傘(ちんがさ)は、戦国・江戸初期の武士が用いた立傘(たてがさ)の一種で、和紙に漆や煤色を施し、家紋や花押を描いた儀礼用・行列用の大型傘です。大鎧具足一式と併せて陣羽織や幟とともに配され、甲冑武者を演出する付属品として重要視されました。
和紙を骨組みに貼り、漆下地・上漆の二重塗りで防水性を確保。煤色や鉄紺に染めた上で金銀泥の家紋や千鳥・龍虎図を蒔絵や手描きで装飾します。骨組みは竹製。持ち手の木製柄は螺鈿や赤銅金具で豪華に仕上げられ、行列時の威容を増します。
真贋では、漆面のクラックパターンや下地の黒漆の浮き・捲れ、蒔絵の古色を観察。骨組みの竹節や金具の錆・打刻から経年を推定します。和紙の虫食いや日焼け具合も価値を判断する重要要素です。
完全な陳傘は希少で数十万~数百万円の評価。博物館での武具展示、歌舞伎・時代劇の舞台装置、能楽や茶会の床飾りとしても重用され、インテリアとしての活用も増えています。
大鎧具足一式と陳傘は、武家文化と儀礼美を象徴する骨董品です。素材・技法・来歴・経年変化を総合的に鑑定することで、その価値を正しく見極め、保存管理を徹底すれば次世代へ伝えることができます。
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