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白磁硯屏(はくじけんびょう)は、宋時代(10~13世紀)の中国で制作された白磁製の硯屏(すずりびょう)で、硯の背後に立てて墨滴の飛散を防ぎ、書斎の意趣を高めるための文房具です。上質な嘉定窯や定窯の白磁とされ、薄手で透光性のある磁肌が特徴。墨滴や墨溜まりを映し出すことで、白磁の清雅な風合いが一層引き立ちます。
宋代は磁器製作技術が飛躍的に進み、白磁は官窯と民窯の両方で盛んに焼成されました。嘉定窯・定窯の白磁は優れた胎土と高温還元焼成により、晶莹(しょうえい)と呼ばれる透き通るような白さを実現。文人たちは書斎の調度品として硯屏を愛用し、詩書画の趣を整える役割を果たしました。当時の硯屏は書家や官吏の間で贈答品にも用いられ、その多くが南宋時代に制作されています。
原料には中国北部や江西省産のカオリン質粘土を用い、極めて精緻に精製。成形は轆轤成形または型押しで行い、成形後は素焼きし、釉下で清透な白釉を掛けて本焼成します。焼成温度は約1,300℃前後の高温還元で、胎土と釉薬が一体化し、貫入の少ない硬質な磁肌を得ます。薄手ながら反りやひびれの少ない均一な仕上がりが窯技術の高さを示します。
装飾は極めて抑制的で、全面を滑らかな白磁に仕上げるか、縁に細い刻線や硯滴受けの凹凸を設ける程度に留まります。背面には短冊形の硯屏孔が開けられる場合があり、その形状や配置で製作地や時代が推定可能です。側面や底面の造形は、書斎の机面に安定して立つよう、わずかな反り返しと厚みの調整がなされています。
宋代嘉定窯や定窯の真作硯屏は、保存良好・無補修品で時価300万~800万円が相場。微細なカケや小補修ありの場合は150万~300万円、来歴不明の写しや後補品は50万~150万円程度で取引されることが多いです。官窯印や詩賛刻印付きはさらに高額となります。
白磁は貫入に汚れが入りやすいため、室温20℃・湿度50~60%の安定した環境で管理。直射日光を避け、埃は柔らかな筆や極細繊維布で軽く払います。補修痕がある場合は専門家による上塗り補修を行い、箱に納めて保管すると、さらなる劣化を防げます。
宋代白磁硯屏は、官窯の高度な技術と文人趣味が結晶した文房具であり、胎土と釉調、成形精度、刻印の有無、保存状態、来歴資料の五要素が揃うことで骨董的価値が最大化します。書斎の調度品としてのみならず、歴史的遺産・投資対象としても今後ますます注目される逸品と言えるでしょう。
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