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寿山石(じゅざんせき)は中国福建省南部、寿山地区で採れる高級印材・彫刻材で、その色彩は赤、黄、青、緑、乳白など多彩に分かれ、石目が緻密で彫刻に最適です。一方、白玉(はくぎょく)はネフライト系の滑らかな白色石で、半透明の艶が特徴となります。古来、これらの石は漢代から清代にかけて文人・官僚の印章や仏像彫刻の素材として用いられ、今日では希少性と美術価値から骨董市場で高く評価されます。
寿老人は長寿・福徳を象徴する七福神の一柱で、手に桃や経巻、杖を持ち、鹿を従えた翁の姿で表されます。寿山石による寿老人像では、桃果の瑞々しさを橙赤色の層で強調し、毛髪や衣文の細部を緻密に線彫りします。白玉製では、乳白の柔らかな肌理が人物の温和な表情を引き立て、頬のふくらみや眉間のしわまで繊細に浮かび上がらせることで、長寿を祝う吉祥寓意を具現化します。
観音座像は、慈悲の仏である観世音菩薩が蓮華座に安坐する姿を表現します。白玉彫刻では、顔貌の滑らかさと衣の皺の柔らかな陰影を対比させ、揺らぎを感じさせる蓮華の細かい花弁を浮彫りで表現します。寿山石製では石色のグラデーションを利用し、後背の光背や台座の雲文、蓮弁の立体感を自然な色彩で演出し、佛教美術の荘厳さと素材の魅力を両立させています。
寿山石彫刻は、刀子や鑿(のみ)を用いた線彫り・浮彫り・鏨(たがね)彫りにより、石目に沿った自然な表情を引き出します。白玉彫刻にも同様の手法が用いられ、筆のように細い鏨で彫り進めることで、石の繊維質を生かした柔らかい造形が生まれます。制作時期は清代乾隆年間まで遡る古拓本を参考にした写刻が多く、明末清初の宮廷用彫刻をルーツとする伝統技術を継承しています。
寿山石も白玉も硬度がありながら衝撃に弱いため、展示・保管は布張り棚やケース内で行います。直接手で触れる際は手袋着用し、油分や汗が付着しないよう注意します。温度差が激しい場所や直射日光は避け、湿度は50%前後を維持し、専用の箱や緩衝材とともに保管すると長期保存に適します。
寿山石と白玉による寿老人・観音座像は、中国彫刻の伝統美と宗教的寓意を結晶させた逸品です。素材の稀少性、彫刻技術の優秀さ、来歴の明確さが価値を決定し、骨董市場では安定した需要と高額取引が続きます。今後も文化史研究と美術品コレクションの両面で注目され続けるでしょう。
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