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日本刀の脇差(わきざし)は、刀身長が30cm前後の短刀とも異なる中間的な刀種で、主に室町時代以降に武士の日常携帯用として重用されました。大小二本差しの「大小」の小柄として用いられることも多く、戦場では予備刀や護身刀として、平時には礼装刀としての役割を果たしました。骨董品としては、脇差特有の寸法、造り込み、および時代様式が評価のポイントとなります。
脇差の起源は室町中期の山城国伝来説がありますが、戦国期以降に本格的に普及。小柄な刀身は取り回しが良く、鎧を着用した際の腰帯装着にも適していたため、武士の必須装備となりました。江戸時代には打刀儀礼とともに礼法用脇差も登場し、文化財としても多くの名作が現存します。
脇差は地鉄・刃文・造り込みの違いで大きく二系統に分かれます。戦国期の実戦刀身は大板目・流れ心象の波紋を伴う互の目乱れが多く、江戸期の礼装刀身は小板目肌で直刃や小互の目が優美に焼かれる傾向。造りは鎬造(しのぎづくり)が基本で、姿・反り・棟の線が刀剣美を決定づけます。
茎(なかご)には作者銘や紀年銘が陰刻され、鑢目パターン(勝手下がり・浅い勝手など)で作刀年代や流派が推定可能。銘がない無銘品でも鑢目の形状や茎尻(くびれ・栗尻など)の仕立てで真偽・時代を見極めます。日本美術刀剣保存協会の鑑定書や特別保存刀剣認定書が付属すると評価は一層高まります。
戦国期の名刀工作脇差は特別保存刀剣で500万~1,000万円以上、保存刀剣認定品は200万~500万円が相場。江戸期の礼装刀身は100万~300万円程度。無銘ながら保存良好な優品は50万~100万円、無傷無鑑定の小板目直刃品は30万~50万円で取引されることがあります。
刀身は使用後に布で乾拭きのうえ油を塗布し、湿度40~60%、室温20℃前後で保管。柄や鞘は直射日光や乾燥エアコンの風を避け、和紙を巻いた共箱に納めると劣化を防げます。定期的なメンテナンスとして、保存刀剣業者による研磨や点検を受けることが望ましいです。
日本刀脇差は、実戦用から礼装用まで多彩な役割を担った刀種で、寸法・地刃・茎銘・造り込み・保存状態・来歴資料の六要素が揃うことで骨董的価値が最大化します。刀装具としての拵えと合わせ、武具コレクターや文化財研究者から今後も高い評価を受け続ける逸品と言えるでしょう。
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