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五段重箱は、正月や婚礼、節会の祝膳を盛るために用いられる漆器で、五段重ねの構造と豪華な装飾が特徴です。中でも「時代蒔絵・五段重箱」は、江戸中期から後期にかけて蒔絵技法が頂点に達した作品群を指し、金粉・銀粉で絵文を浮き立たせた華麗な意匠が市場で高く評価されています。
蒔絵は平安末期に始まり、鎌倉・室町を経て江戸時代に大成しました。江戸中期以降、豪家や大名家で五段重箱を調度品として制作させ、家格を示す装飾具となります。各地の漆工房では蒔絵の文様に地域色を持たせつつ、江戸蒔絵の手法を模倣・発展させました。
下地漆に錆粉を混ぜて地固めを行い、乾漆地に描線漆で図柄を描き、金銀粉を蒔き付けます。蒔き上がりを研ぎ出し、必要に応じて彩色漆で色差しし、さらに上塗漆で仕上げます。菊桐唐草や吉祥文が多用され、段ごとに異なる意匠を配して華麗さを競うのが常です。
漆器は直射日光と乾燥に弱く、湿度50%前後を保つ環境が望ましいです。展示時は紫外線カットケース内に収め、長期間展示せず時折休ませることが肝要です。箱や仕覆は湿度調整と衝撃緩和に役立つので、大切に保管してください。
時代蒔絵・五段重箱は、江戸期の漆工芸技術と祝膳文化を象徴する逸品です。制作年代、蒔絵の完成度、保存状態、来歴資料の有無が価値を大きく左右します。完全品は国内外の骨董市場で高額取引されるとともに、茶席や室内装飾にも映える文化財的存在として今後も注目を集め続けるでしょう。
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