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景徳鎮粉彩(ふんさい)花瓶は、中国江西省景徳鎮窯で制作された高級磁器で、その淡雅な色調と繊細な絵付けが特徴です。本作は胴部や肩部に中国古典の花鳥文様や吉祥文様を粉彩技法で配し、底部に在銘(製作者や年款を示す銘)が刻まれた逸品です。骨董品としては、制作年代・銘の信憑性・技術的完成度・保存状態・来歴資料の五要素で評価が決まります。
粉彩技法は清朝康熙末期から雍正・乾隆年間(18世紀前半)に完成し、明代の青花磁器に替わる宮廷御用磁として隆盛しました。乾隆帝のコレクションを背景に、粉彩は淡いピンク・緑・黄・紫・褐の五彩を用いることから「五彩」磁とも称され、日本や欧州への輸出品としても重用されました。
粉彩はまず下絵付けを行い、釉下で素焼し、その上に彩絵具を盛り上げる「釉上彩」を行う二段階工程です。彩絵具には酸化金属顔料を膠(にかわ)で練り、低温(約800–900℃)で再焼成。発色は淡く柔らかでありながら、階調と立体感を伴うため、絵師の筆致と焼成管理技術が如実に表れます。
本花瓶では牡丹華文や瑞獣(麒麟・鳳凰)、蓮池図、竹林文など吉祥意匠が用いられています。牡丹は富貴長春を、蓮は清浄志向を示し、瑞獣は平安護持を願うシンボル。色調は淡いローズピンクと若緑を基調に、金彩や線刻で文様を際立たせ、古典美と華やかさが調和しています。
底部に刻まれた「乾隆年製」款や工房印は、制作年代と窯元を裏付ける重要な証拠です。真作の在銘には文字の書体、刻印の深さや配置、釉薬のかかり具合に一貫性が求められ、後補刻や偽銘は評価を大きく下げます。来歴資料として鑑定書や旧蔵者文書と照合することが肝要です。
清乾隆期の真作粉彩花瓶で状態極上・在銘完備品は時価で500万~1,500万円。軽微な修復や小チップあり品は200万~500万円、後期写しや来歴不明品は50万~200万円が相場です。希少意匠や完全共箱付はさらに高額となります。
粉彩磁器は直射日光・急激な温度変化・強い衝撃を避け、室温20℃前後・湿度40~60%を保つ環境で管理します。展示はUVカットガラスケース内が理想。埃は柔らかな筆で払うか、極微量の水分を含ませた布で軽く拭き取り、化学薬品や研磨剤は厳禁です。
景徳鎮粉彩花瓶在銘は、制作年代・在銘真贋・粉彩技法・意匠完成度・保存状態・来歴資料の五要素が揃うことで骨董的価値が飛躍的に高まります。茶席や調度品としてだけでなく、投資対象や美術館収蔵品としても今後ますます注目される逸品と言えるでしょう。
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