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李朝白磁壺は、朝鮮王朝(李氏朝鮮、1392~1910年期)に制作された磁器の代表的な器形で、素朴かつ清澄な白い釉面と均整のとれた造形美が特徴です。用途は水差しや花器、茶壺など多岐にわたり、古来より朝鮮の土俗的精神と儒教の質素な美意識を体現する器物として愛されてきました。
李朝前期には景徳鎮製磁器の影響を受けた青磁や白磁が輸入され、後期には国内での磁器技術が成熟。特に16~17世紀の中期には、官窯と民窯の両方で素焼き直後に施釉し還元焼成を行う技法が確立し、李朝白磁の独自性が開花しました。
典型的な李朝白磁壺は、胴部がたわみを持つ「胡椒壺形」、口縁が広がる「皿形」、あるいは丸みを帯びた「月壺形」など多彩です。装飾は無文または細かな刻印文様が極限まで抑制され、釉薬の垂れや貫入(かんにゅう)による自然な景色を鑑賞するのが魅力です。
胎土には優れた可塑性を持つ金剛山産の陶土を使用し、粒子の細かい白色の素地が得られます。釉薬は白土灰や木灰を主体に調合し、低温還元焼成で薄い乳白色から青白色の微妙な色調を表現。釉面の厚みや滑り具合が鮮明に残るものが高評価です。
成形は轆轤(ろくろ)成形が中心で、胴部の押さえや高台削り、口縁の仕上げに高度な技術を要します。素焼き後の釉掛けは刷毛掛け・浸漬・吹掛けが使い分けられ、釉薬の垂れやムラを意図的に活かす職人の力技が見所です。
李朝中期(16~17世紀)の良好保存品は300万~800万円、素朴な初期民窯白磁壺は100万~300万円、口縁や胴部に小チップや貫入があるものは50万~150万円程度が相場とされます。
白磁は急激な温度変化や硬い衝撃に弱いため、室温20℃前後・湿度50%程度の環境で保管。展示時は直射日光や空調風を避け、柔らかな布で乾拭きし、専用の台座やクッションを用いると長期保存に適します。
李朝白磁壺は、素朴ながら深い味わいを湛え、造形・釉調・窯変景色の三位一体で評価される稀少な骨董品です。制作技法と来歴の確かさ、保存状態がそろうことで価値が飛躍的に高まり、茶道具コレクターや美術館で今なお高い評価を受けています。
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