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桃珊瑚は宝石珊瑚の一種で、淡いピンクから柿色〜赤みを帯びる色調を示す素材です。日本近海(四国・九州・小笠原・沖縄周辺)を含む西太平洋で採取され、ジュエリーや彫刻、帯留め・根付など伝統工芸に広く用いられてきました。良質な桃珊瑚は色の均一性と透明感、材のしまり(比重)で評価されます。
桃珊瑚には色調や成長形態で呼称の差があり、極めて淡い「エンジェルスキン(ボケ)」や、やや濃い「フェニックス」「姫サンゴ」など複数の評価語が使われます。材の断面は均一な色層を示すものが高品質で、表面の光沢や研磨後の艶、木目(枝状の節理)の密度も鑑別点になります。
鑑定では①色の均一さと透明感、②比重・硬度(本珊瑚は重く硬い)、③研磨面や断面の天然の層理、④孔や節の自然さ、⑤加熱・染色や合成樹脂による後加工の有無を確認します。拡大鏡で見ると、染色や樹脂注入は色の滲みや気泡で判別できることが多いです。写真提出時は断面・全体・クローズアップを用意してください。
珊瑚は有機質の骨格であり、硬いながらも強い衝撃や急激な温湿度変化で割れやすいです。直射日光や高温、薬品は避け、柔らかい布で拭く程度にとどめてください。長期間保存するときは湿度管理(過乾燥を避ける)と専用ケース保管が望ましく、磨耗や摩擦で色が変わることがあるため研磨は最小限に。来歴書や箱は必ず保管してください。
価値は「色(希少な淡桃色や血色に近いものは高価)」「材の大きさ(原木の太さ)」「無傷での保存」「加工の良否(彫や穴あけで割れがない)」「来歴(良い産地証明や古い工芸品としての由緒)」で決まります。希少な「ボケ」系は流通が極めて少なく、コレクター需要が高い点に留意してください。
宝石珊瑚のうち特定種は国際取引で規制の対象になっている場合があるため、輸出入や海外販売を行う際はワシントン条約(CITES)や各国の原産地証明・許可要件を必ず確認してください。産地や学名によって必要書類が異なるため、取引前に専門窓口で確認することを強く推奨します。
査定依頼時は高解像度の全体写真、断面(切断面)の写真、重さ・寸法、購入時の伝票や箱書・産地情報を揃えてください。疑義のある場合は比重測定や顕微鏡観察、必要なら専門分析(非破壊のスペクトル検査等)を依頼すると確度が上がります。修復・補填の履歴は必ず開示してください。
桃珊瑚は色合いの美しさと希少性で骨董・宝飾市場で高い評価を受ける素材です。正確な評価には外見観察だけでなく比重・断面・来歴・加工履歴の確認が必須であり、輸出入や販売時は規制確認を欠かさないことが重要です。
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