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楽茶碗自作黒茶碗は、京都・楽家に伝わる抹茶茶碗の系譜を踏襲しつつ、作者自身が轆轤と手捻りを組み合わせて制作した黒楽茶碗です。黒釉を厚く三度掛けすることで、艶やかな漆黒に深い陰影を与え、口辺のリム(縁)の薄さや見込み(内側)の緩やかな曲線が手の内に心地よく収まる設計となっています。
即中斎(表千家第十六代家元)が共箱の内桐箱に墨書で「楽茶碗自作黒茶碗 即中斎書付 ●●年●月●日」と記した書付は、来歴と品質を保証する重要資料です。家元の書付は茶道具としての格式を格段に高め、茶会や鑑賞席での信頼性・権威性を担保します。
素地は赤土系の陶土を用い、初めに轆轤挽きで碗型を粗成形し、乾燥が進んだ段階で作者独自の手捻り技法を加味。胴部にわずかな指跡や窯変を残すことで、均質すぎない自作ならではの温かみを演出します。黒釉は鉛を含む伝統配合で、約1,200℃の還元焼成により緻密かつしっとりとした光沢を帯びます。
自作黒茶碗は、外観の大きな艶斑と、見込に施された枯茶の粉溜まりが絶妙なコントラストを描きます。口縁の薄さは約3㎜前後に調整され、茶を点てる際の刃先との接触感を追求。高台(こうだい)は低めに削り込まれ、安定感とともに高台脇の土味(どみ)が外気を柔らかく反射します。
真作を見分けるには、まず箱書き墨書の筆勢と即中斎の花押(かおう)がAuthenticかを確認します。次に黒釉のかかり方を観察し、釉面の小さな貫入(かんにゅう)や窯変の色幅が自然かどうかを検証。高台内側の轆轤跡や削り痕の滑らかさも手仕事の証として重要です。
共箱は桐材の木目や墨染みの風合い、内側の和紙貼りの質感で保存状態が判断できます。仕覆は正絹の金襴や綴れ織の裂地が用いられ、家元書付中棗と同様に家紋の刺繍や落款の刺繍が真贋の手がかりとなります。箱・仕覆が揃った「完全品」は市場価値が飛躍的に上昇します。
即中斎書付の自作黒茶碗は、近年の茶道具オークションや専門骨董店で50万円~150万円程度の価格帯で取引されることが多く、特に保存状態が良好で書付墨書が鮮明な個体は高額落札例があります。作者の在籍年や制作時期によっても相場が変動し、初期作品ほどコレクターからの人気が高い傾向にあります。
楽茶碗の黒釉は貫入に茶渋が入り込みやすいため、使用後はすぐに湯で軽くすすぎ、布で水気を拭き取ります。直射日光や急激な温度変化を避け、桐箱に仕舞う前に十分に乾燥させてから収納。長期保管時は防湿剤とともに湿度50%前後を維持してください。
楽茶碗自作黒茶碗即中斎書付は、作者自らの手技と家元の権威が融合した稀少な茶道具です。作陶技法、造形美、書付墨書、箱・仕覆の完全性を総合的に評価することで、その価値を正しく見極められます。購入や鑑定の際には、信頼できる専門家とともに真贋・来歴を確認し、適切な保存管理を行うことをおすすめします。
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