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火縄銃「管打式鉄砲」は、戦国時代末期から江戸時代初期にかけて日本で用いられた鉄製の小銃で、銃身内部に火薬を詰め、外管(そとくだ)と呼ばれる細管に火縄の火を伝えて発射する構造が特徴です。中折れ式や金具装飾を伴う装飾品としても重宝され、骨董市場では銃身や金具の刻印、保存状態などが価値を左右します。
鉄砲伝来(1543年)後、種子島や堺の鍛冶師が技術を完成させ、管打式は天正期(1570年代)に普及。大名家や国衆が運用し、戦国の主力兵器として戦局を左右しました。江戸幕府成立後は儀礼用・演武用に移行し、装飾性の高い管打式が増加しました。
管打式は銃身(大筒)とは別に細い外管を鋲で取り付け、銃身側面の鋳造孔(火門)から火を導きます。火縄は長さを調整し、外管上で保持されるため安定した発火が可能。中折れや二重管構造のものもあり、射手の取り回しと耐久性に配慮されています。
銃身は鍛接や鋳造で作られ、鉄地には鋳肌や鍛え目が残ります。金具(栓、銃把金具、尾栓)は真鍮や錫(すず)混合鋳物で、鍍金や金象嵌を施す例もあります。木製銃床(銃把)は欅や朴木が好まれ、実戦用は堅牢、儀礼用は細工の精緻さが際立ちます。
銃身や金具に鋳込まれる「鍛冶師印」「奉納年紀」「藩名印」などの刻印が、来歴判定の重要な手掛かりです。古い刻印は摩耗しやすく、鮮明なものは高評価。写しや模刻には後補刻印が見られるため注意が必要です。
天正期の実戦用管打式無銘良品は100万~300万円。藩指定鍛冶や有名鋳物所在銘品は300万~800万円。江戸後期の儀礼用豪華装飾品は50万~200万円、保存傷みのある使用痕品は20万~50万円が相場です。
鉄製部品は湿度50~60%、温度20℃前後で保管し、油分の薄塗りで錆止め。火門や管内に異物を詰めず、埃は毛抜きや柔らかな布で除去。木製銃床は乾燥割れ防止のため適度に湿度を保ち、直射日光を避けて管理します。
展示の際は銃床を水平に置き、銃身は支持具で保持。金具の装飾面を正面に向けることで工芸性を強調できます。古色景色(焼付けや錆の風合い)を尊重し、過度な研磨や修復は避けることが望ましいです。
管打式鉄砲は、戦国から江戸期にかけての戦術・文化を映す工芸遺産です。制作年代、鍛冶師印、銃身・金具・木地の保存状態、来歴資料の五要素が揃うことで骨董的価値が飛躍的に高まり、歴史的資料としてもコレクターから高い評価を受け続ける逸品と言えます。
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