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当世具足(とうせいぐそく)は江戸時代以降の実戦用甲冑の流れを汲み、近世から近代にかけての様式や素材を反映した具足群を指します。その中の「籠手(こて)」は腕部、特に手首から前腕を保護する防具で、機能性と装飾性が同居する重要部材です。骨董の観点では、時代性・作行き・材質・来歴が価値判断の主要因となります。
籠手は鉄板や小札(こざね)を革で綴じたり、縅(おどし)で連結した複合構造が基本です。内側に革や布の当てが付くもの、外面に漆をかけて錆止めと飾りを兼ねたものが多く、甲冑全体と合わせた縅糸・金具の意匠が鑑賞点になります。
鉄質(玉鋼系か軟鉄か)、漆の層、縅糸の絹・麻・革の種類、金具の赤銅・真鍮・銀等の素材が価値を左右します。漆面の飴色化や金具の古色は経年の美として評価されますが、不自然な均一な古色や人工的な焼けは注意が必要です。
鋲(びょう)・鎹(かすがい)・縫い目の処理、綴じ方の丁寧さ、小札の打ち出し痕、縅の締め具合と結び目の処理などが職人のレベルを示します。高い作行きは細部に現れるため拡大観察が有効です。
当世具足は江戸~明治の変遷で形状や意匠が変化します。例えば帯刀位置や手甲の形状、縅色の流行、金具意匠の様式から時代層を推定できます。修復や仕立替えの有無も年代判断に影響します。
旧蔵家、藩伝来、軍装記録、写真資料が残ると学術的価値と市場価値が飛躍的に高まります。来歴は真贋裏付けにもなるため、箱書や古文書の有無は必ず確認してください。
偽刻や模造の流通があるため、鉄の打ち込み痕、錆層の厚さ、漆層の重なり、縅糸の自然退色、金具の製法的特徴(鋳造痕・彫金の仕上げ)を総合的に検討します。近代の復元は接着剤や新材の使用で見抜ける場合が多いです。
金属は湿気で腐食しやすく、革や絹は乾燥で脆化します。保管は温湿度管理(湿度50%前後)、直射日光回避、通気を確保すること。展示時は支持台で内部歪みを避け、素手での取り扱いを避けて手袋を着用してください。
破損補修は可逆性素材を用い、最小限の介入に留めること。新材の追加や全面塗替えは史料価値を損なうため、修復記録を詳細に残し、専門の保存修復士に依頼することが推奨されます。
価値は作行き(名工作かどうか)、保存状態、来歴、希少様式(特殊意匠や豪華縅)、付属の具足一式の有無で決まります。単体の籠手でも名工作や藩伝来品は高価で取引されることがあります。
籠手は立体的に見せると細工の妙が伝わります。側光で漆の艶や金具の彫金、縅目の陰影を強調し、装着状態(甲冑に組んだ状態)の再現で用途美が伝わりやすくなります。
当世具足の籠手は実用品としての工夫と装飾美が結実した骨董品です。真贋は素材・手仕事痕・金具・来歴を多角的に検討し、保存は温湿度管理と専門修復で行うことが、文化的・市場的価値を維持する鍵となります。
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