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目貫・小柄付き短刀(脇差)は、武士の脇差装備として用いられる小型刀剣に、柄(つか)飾りとして目貫(めぬき)と小柄(こづか)を取り合わせた豪華な拵(こしらえ)です。目貫は柄糸の下に仕込み、鞘(さや)上に小柄を差し込む金具で、機能と装飾を兼ね備えた逸品として評価されます。
脇差は江戸時代に町人・下級武士にも普及し、短刀より長く長刀より短い二尺前後が標準でした。目貫と小柄は戦国期以降、刀装具技術の発達とともに意匠性を高め、柄周りの握り心地向上と、刀を差す際の引き抜きやすさを両立。江戸期中期以降の拵は、豪華な蒔絵鞘や金銀象嵌金具と組み合わされて贈答用・格式表示用としても用いられました。
目貫は鉄地に金銀象嵌・赤銅色絵・金鍍金など多彩な技法で浮彫や透かし細工を施し、龍虎・鶴亀・花鳥風月など吉祥文様を図案化。小柄は平小柄または透かし小柄があり、縁頭(ふちがしら)や鐺(こじり)と意匠を揃えることで拵全体の統一感が生まれます。拵上の金具組み合わせは、流派や好みで千差万別です。
銘尽くしの金工師作は、精錬銀・赤銅・真鍮を鋳造または板打ち出しで成形。象嵌は金銀線を細い溝に嵌め込む「柄杓象嵌」、色絵は赤銅を高温焼き付ける「赤銅色絵」、金鍍金は水銀アマルガム技法を用いるものもあります。高い技術を要する透かし彫りや嵌合は、刀装具の最高峰とされます。
真作判定では、刻印の有無と書体、金具裏面の鋳型湯口跡、象嵌線の痕跡、赤銅色絵の剥落具合を詳細に観察。金鍍金は自然な摩耗・経年銀化が見られるか、人工的な再鍍金痕がないかを確認します。柄糸や鞘の裂地、鞘塗りの塗り重ね痕も来歴を裏付ける手掛かりとなります。
無銘の一般拵でも数十万~百万円程度、有名金工師作や来歴書付の逸品は数百万円~千万円以上が相場。保存状態良好で拵一式そろい、刀身と拵の組み合わせがオリジナルの完全品は高値が期待できます。
金具は湿度変化で錆や銀化が進むため、乾燥状態を保ち、革・木地部分は乾燥と湿気管理を徹底。金具表面の埃は柔らかな馬毛筆で払うのみとし、化学薬品や研磨剤は使用しないでください。刀身との組み合わせは摩耗防止のため、時折抜差しを行い鞘内の湿気を逃がします。
目貫・小柄付き脇差拵は、刀身と合わせて鑑賞することで、武具工芸の総合美を体感できます。金具意匠の違いを並べて比較したり、流派ごとの金工技法を学術的に蒐集したりすることで、日本の伝統金工技術の深さを楽しめるコレクターアイテムです。
目貫・小柄付き短刀(脇差)は、武士の美意識と刀装具工芸が融合した逸品です。金具意匠、技法、刻印、来歴、状態を総合的に鑑定し、適切に保存管理することで、その歴史的・美術的価値を次世代へ伝えていくことができます。
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