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竹根(たけね)彫は、竹の根や根株の瘤(こぶ)を素材にして彫刻・工芸化した伝統的な手仕事で、そこに十二支(子・丑・寅…亥)の動物図像を配した作品群を「竹根 十二支」と呼びます。中国の根雕(げんちょう)や日本の根付・根杢細工と系譜的に近く、素材の自然のうねりや節を活かして十二支を立体的に表現する点が特色です。
竹根彫は中国南方を中心に古くから行われ、明末清代以降に趣味工芸として発達しました。日本でも江戸期以降に民藝や茶道具の添え物として親しまれ、十二支をテーマにすることで暦・吉祥・家の守り神的意味合いが強まり、年賀や贈答の対象にもなりました。
竹根は節や瘤に富むため表情が豊かで、木部に比べて緻密かつ軽いのが利点です。内部は繊維が絡み合い、自然の穴や割れが作品の「景色」として評価されることがあります。乾燥過程で収縮が起きやすいため、制作前の乾燥管理が重要です。
良材選び→水洗・蒸し→十分な自然乾燥→下絵・構成決定→粗彫り(ノミ・鑿)→細彫り(刻刀・彫刻刀)→研磨→仕上げ(オイル、蝋、漆、彩色、金箔等)という流れが一般的です。素材の起伏を活かすため、彫刻は「引き算」の美学で行われます。
十二支は各動物の姿態や表情、身体の動きで個性を出します。たとえば「子(ねずみ)」は素早さを示す小刻みな造形、「辰(たつ)」は蛇龍的な曲線、「午(うま)」は奔放な躍動感といった具合で、竹根の節を耳や尾、たてがみなどに巧妙に取り込む手法が多く見られます。
本物・良作を見分ける際は、刀跡やノミ跡の自然な揺らぎ、表面の艶(経年による飴色化)、細部の抜け(目・口・爪の刻み)、材の痩せ具合、虫食い痕の自然さ、接着や補修の痕跡を確認します。近年の大量生産品は旋盤跡や均一すぎる着色、樹脂充填の痕があるため注意が必要です。
竹根は急激な温湿度変化で割れや反りが生じやすいので、温度20℃前後・湿度45〜60%の安定環境が理想です。直射日光や強い室内灯は避け、埃は柔らかい馬毛筆で払い、油や化学薬品での拭き取りは行わないでください。古い黒ずみや汚れは専門家に相談するのが安全です。
欠損補修や接着は見た目や強度を改善しますが、過度な補彩や合成樹脂の乱用は骨董価値を損ないます。修復は可逆的な材料と記録保持を前提に、専門の保存修復士に依頼することを推奨します。
価値は作家性(名工の署名や伝来)、制作年代、材料の希少性、彫技の精緻さ、保存状態、共箱や来歴書の有無で決まります。小品は数万円帯から流通しますが、名作や古作、来歴の明確な一点は数十万〜数百万円クラスとなることもあります(作品により大きく差異あり)。
展示では側光を入れて節と彫りの陰影を出すと立体感が際立ちます。回転台に載せて角度を変えながら鑑賞すると、素材の表情や彫りの妙がより伝わります。十二支は並べてシリーズ展示にすると比較と物語性が楽しめます。
竹根による十二支彫刻は、自然材の「かたち」を生かす控えめな技巧と、細部に宿る彫りの力量が評価される工芸です。真贋や価値判定には材料観察・刀痕・経年変化・来歴の総合鑑定が不可欠で、適切な保存管理と記録保持により文化的価値を長く伝えることができます。
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