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竹煙管入れ(たけきせるいれ)と金工細工キセルは、江戸時代から明治期にかけて喫煙具として愛用された竹製の携帯入れと金属製の細身煙管です。竹の自然美と金工技術の融合により、実用性と装飾性を兼ね備えた工芸品として評価され、現代では骨董品市場で高い人気を誇ります。
煙管(キセル)は室町時代末期に日本漢方香の流通とともに普及し、江戸時代には町人・武士の嗜みとして定着。竹製入れは携帯性を重視し、藩屏風や茶道具と共に道具組の一部となりました。明治以降の西洋たばこ文化の影響下でも、国内では竹入れと細管式キセルが継承され、輸出工芸品としても製作されました。
素材には真竹や孟宗竹を乾燥・割り組みし、内側に桐材や布張りを施します。外装は自然節を活かした素地仕上げ、あるいは漆塗り・螺鈿・象嵌で飾られることも。口輪には金属製の縁金具を打ち込み、胴部に絹紐や革紐の提げ緒を付け、携帯時の摩耗を防ぎます。
キセル本体は真鍮・銀・赤銅合金などを鋳造・鍛造し、吸口(フイゴ)・中管(眉庵)・火皿は分割式に組み立て。火皿外縁や柄部には透かし彫り、彫金、金銀象嵌、金鍍金が施され、木の葉文・唐草文・家紋をあしらう細緻な装飾が特徴です。口あたりを滑らかにする磨き仕上げも重要な技法です。
竹入れは円筒形・角形・両用型(煙草入れ兼用)など形状多彩。螺鈿で梅・菊・流水文を絢爛に飾る豪華品や、黒漆仕上げに金粉で武家家紋を描いた格式品があります。キセルは古典的な宝珠摘み、猪目透かし、龍彫、鳳凰象嵌などモチーフが豊富で、愛用者の身分や好みを反映します。
無銘の竹入れと量産キセルの組は3万~10万円程度。蒔絵螺鈿や象嵌装飾を施した高級品は20万~50万円、有銘作家・大名家伝来品は100万~200万円以上となることがあります。
竹製品は乾燥に弱いため、湿度50~60%・室温20℃前後の環境で保管。埃は柔らかな刷毛で除去し、漆器部分は乾拭き。キセルは分解可能部を外し、綿布で水分を拭き取って乾燥後に組み立て。化学薬品や研磨剤は使用しないことが長期保存の鍵です。
竹煙管入れと金工細工キセルは、素材・技法・意匠・保存状態・来歴資料の五要素が揃うことで骨董的価値を発揮します。実用具としての趣と工芸の粋を伝える逸品として、喫煙具コレクターや工芸愛好家から今後も高い評価を受け続けることでしょう。
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