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藍釉觚(コ)花瓶は、中国古代青銅器の形を陶磁器で復刻した擬古意匠の花瓶で、口縁が小さく胴部が広がり、底部は三本脚(または高台)を備える独特のフォルムが特徴です。釉下に施された深い群青色の藍釉と、器形が放つ荘厳さが調和し、茶席や室内装飾の調度品として好まれました。
觚(コ)は本来、中国殷・周王朝期の青銅酒器として用いられた酒杯形器。陶磁器でこの形を再現するのは明・清時代の意匠陶や近現代輸出向けの復古品に多く見られます。特に清朝乾隆年間以降、青花・粉彩・色釉と組み合わせた復古陶が流行し、藍釉で仕上げた觚花瓶はその延長線上に位置します。
藍釉觚花瓶は、直立する細口から胴へ緩やかに膨らみ、肩部から三本脚が均等に張り出すフォルム。口縁には細い鉄砂縁(テッシャエン)が施されることが多く、釉面の厚みとのコントラストが繊細です。胴部には釉面の窯変によるムラや滴りが意匠性を高める装飾として活かされています。
藍釉はコバルト顔料を高温還元焼成で発色させた瑠璃色の釉薬で、釉下から透ける美しい群青色が魅力です。還元焔の温度や窯内の気配で発色に変化が生じ、釉面に黒味を帯びた濃淡が生まれるため、同じ意匠でも一点ずつ異なる表情を見せます。さらに釉下細工や鉄砂縁との相性も優れ、文様がより際立ちます。
胎土には中華陶土を用い、轆轤成形または鋳込み成形後、素地を素焼きします。次に釉薬調合した藍釉をスプレーまたは浸漬で掛け、800~1,200℃の還元焼成を行います。釉薬の厚みや掛かり方を均一にするには窯場の熟練が不可欠で、焼成後の釉面にできる貫入(ヒビ)や滴りは査定対象となります。
貫入や小さなチップは経年変化の証ともなりますが、大きな割れや補修跡は価格を下げる要因です。釉面の艶が残り、鉄砂縁や脚部に錆や漆塗りの剥がれがないことが望ましい。鑑定では釉下の貫入パターン、胎土の断面、脚部の取り付け角度から真贋と時代を判別します。
明清期の古作で状態極上・共箱付きは300万円~600万円、完品では1,000万円を超える例もあります。近現代の復古品は80万円~200万円が相場。脚部や口縁の小欠があるものは30万円~80万円、補修跡や大きな窯キズがある場合は10万円~30万円程度となります。
藍釉觚花瓶は、中国古代酒器のフォルム美と藍釉の深い色調が融合した骨董品です。制作年代、釉調、造形、保存状態、来歴資料が評価を決定づけ、特に明清期の古作は高い希少価値と芸術性を併せ持ちます。今後も中国陶磁コレクターや茶席愛好家の間で需要が高まり続ける逸品と言えるでしょう。
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