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大西家は、室町時代末期から京都を拠点に代々茶の湯釜を制作してきた名門釜師の家系で、千家十職の一つとして知られます。初代大西浄林以降、約400年以上にわたり名匠を輩出しており、その技術と美意識は日本の茶道文化と深く結びついてきました。五郎右衛門は大西家に連なる釜師であり、その作風と技巧は高い評価を受けてきました。
富士形釜とは、茶の湯釜の形状の一つで、円筒形を基調としながら上部に向かって緩やかにすぼまり、まるで富士山を思わせる姿をしています。その端正で優雅な形は、茶室の静謐な空間にふさわしい品格を備えており、数ある釜形の中でも特に格調高いとされています。
富士形釜には、過度な装飾を避けた「侘び」の精神が表現されており、釜肌の鉄肌(ちょくひ)や、蓋の造形、摘みの形に至るまで、釜師の美学が凝縮されています。五郎右衛門の作は、重厚でありながら洗練されており、用の美と観賞美が調和した逸品です。
極箱(きわめばこ)とは、茶道具や工芸品において、目利きやその分野の権威者が「これは○○の作である」と鑑定し、署名を入れた箱のことを指します。大西清右衛門による極箱が付属するということは、その作品が大西家の真正な系譜にあると正式に認められた証であり、その骨董的価値と真贋性において絶大な信頼性を持ちます。
箱書には「富士形釜」「大西五郎右衛門作」「大西清右衛門識」などの墨書が記され、共布や栞が添えられていることもあります。こうした付属物の有無は、作品の真正性、査定額、学術的価値に直結します。
釜の表面である「釜肌」の状態は、骨董としての評価を左右する大きな要素です。適度な経年変化による風合いがありつつ、錆や欠けがなく、美しい鋳肌を保っているものは高く評価されます。
極箱、共布、共蓋の有無、由緒書、展覧会出品歴なども査定に影響します。特に茶人や宗匠の旧蔵品であれば、来歴が付加価値となり、価格に大きな差を生みます。
大西五郎右衛門という名前が明確であり、かつ清右衛門の極がある場合、作家性の確かさから評価が安定しやすく、長期的な資産としても信頼が置かれます。現存数が限られていることも価値を高める要因です。
茶道具としての釜は、美術品であると同時に実用品でもあり、茶道を嗜む人々の間で根強い需要があります。特に千家十職やその系譜に連なる釜師の作品は、道具としての実用性と美術工芸としての品格を兼ね備えており、コレクション・茶席用の両面で高く評価されています。
鉄製である釜は、湿気と急激な温度変化に弱いため、使用後は水分をしっかり拭き取り、布で包んで風通しのよい場所に保管する必要があります。また、極箱や共蓋などの付属品は別途防湿管理を行い、傷や汚れが付かないよう注意することが求められます。
大西五郎右衛門作の富士形釜は、大西家釜師の技と美学が詰まった名品であり、大西清右衛門の極箱付きであれば、その真贋と格式が保証される極めて価値の高い骨董品です。茶道具としての実用性だけでなく、美術的・歴史的価値を兼ね備えており、今後も高い評価と需要を保ち続けることでしょう。
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