Menu
菩薩坐像は、悟りへの道を歩む大乗仏教の理想像として造形された仏像で、特に平安~鎌倉期に優れた作例が多く残ります。典型的には蓮台上に安置され、右手は施無畏印(恐れを取り除く印)、左手は与願印(願いを叶える印)を結ぶ姿で表されます。柔和な面相と流麗な体躯は、衆生を救済する慈悲の心を象徴します。
当件では、菩薩坐像に加え、如来立像・地蔵菩薩像・弥勒菩薩立像など計4~5点を一式として取り扱います。各躯には台座裏の墨書や螺髪(らほつ)・光背の形状が異なり、時代や流派の差異を比較検討できる貴重なセットです。
鎌倉期の快慶・運慶流を思わせる肉付き豊かな力強さと、平安後期の定朝様を継ぐ端正で上品な様式が混在します。台座裏の墨書「建仁二年」「康元元年」などの年紀と、光背裏の彫刻師銘「法眼○○」は、作風と一致して真作性を裏付ける手がかりとなります。
主に檜材一木造・寄木造のいずれかで、下地に胡粉・赤土漆を施し、彩色は胡粉地に岩絵具と群青・朱・金泥を使用。螺髪や像内納入品の銀製舎利瓶など細部は蒔絵・金箔装飾により荘厳に仕上げられています。
木地の年輪密度、鋸目や鑿跡の自然さ、彩色層の経年による微細ひび割れ(虎斑)、金泥の粒子と付着状況を詳細に観察します。共箱裏の書付筆者、仕覆裂地の織り柄と染色ムラ、光背金具の打刻印も真贋・来歴を判定する重要情報です。
鎌倉期快慶流作の菩薩坐像は無傷・完全品で数千万円~数億円規模、同時代の他仏像一式揃いはさらに価値が上乗せされます。平安期定朝様作や室町期写し像は数百万円~数千万円、来歴書付や名寺旧蔵品はプレミア価格となることがあります。
仏像は木地と漆彩が湿度変化に弱く、乾燥で割れ、湿潤でカビや虫害を招きます。温度20℃前後・湿度50%前後の安定環境で保管し、直射日光やエアコン直吹きを避けます。埃は柔らかな馬毛筆で軽く払い、修復・裏打ち替えは専門仏像修復家に依頼してください。
異なる時代・流派の仏像を一式で揃えることにより、肉眼で流派様式や技法の変遷を学べる学術的価値があります。床の間や収蔵庫に並べると、室礼としても格調高い空間演出が可能です。
菩薩坐像と他数点の仏像一式は、日本中世彫刻の多彩な流派・時代を体現する骨董品です。木地・彩色・款識・来歴・保存状態を総合的に鑑定し、適切な保存管理を行うことで、その歴史的・美術的価値を次世代へと伝承できます。
鑑定のご相談、
お待ちしております!
多くの士業関係の方からも御依頼を頂いております。お気軽にご相談ください。