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蒔絵印籠(まきえいんろう)は、江戸時代に武士や町人の帯装身具として発達した小型容器で、木製素地に漆を下地として重ね、金粉・銀粉で文様を描き出す蒔絵技法を施した工芸品です。印籠は薬や香を納める用途のほか、装飾品としても愛用されました。
印籠は17世紀初頭に中国渡来品を模倣して日本で誕生し、18世紀中頃には京・江戸・輪島を中心に蒔絵印籠が洗練。天明・寛政期の豪華絢爛な蒔絵や、享保期の簡潔な片面蒔絵など時代ごとの様式が存在します。
素地はクルミやニレ、桑など堅木を刳り貫いた木地。下地には砥粉漆や胡粉漆を数回塗り重ね、研ぎ出して平滑に仕上げます。堅牢な下地があってこそ、上層の蒔絵層が長期保存に耐えます。
文様は漆で下絵を描き、金粉・銀粉を蒔いて定着させる「平蒔絵」が基本。高蒔絵で盛り上げることで立体感を加えた例や、沈金で線を掘り、粉を埋め込む技法も見られます。
図柄は桜・梅・松竹梅・山水・鶴亀・龍虎など吉祥文が中心。印籠の前面・背面ともに装飾し、縁金や金具の彫金と組み合わせた総合芸術品として完成します。
無銘の小型印籠は5万~15万円、優れた蒔絵師作や高蒔絵例は30万~80万円、有銘作家や一流紀年作は100万~300万円と評価されます。共箱・金具完備で来歴明確なものほど高額です。
漆器は乾燥や湿度変化に弱いため、湿度50%前後・温度20℃前後で保管。埃は柔らかな刷毛で軽く払い、化学薬品や研磨剤は禁物。たまに乾拭きする程度で、共箱に納め直射日光を避けて保護します。
蒔絵印籠は、素地・下地・蒔絵・金具・保存・来歴の六要素が揃うことで骨董的価値を発揮します。江戸漆芸の粋を集めた小型芸術品として、印籠コレクターや漆芸愛好家から今後も高い評価を受け続けるでしょう。
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