Menu
金寿堂は江戸末期創業の老舗鋳物工房で、代々伝わる伝統技法と独自の意匠を受け継いできました。特に鉄瓶製造においては備前・南部・大阪など各地の名匠技法を研究し、明治以降は茶席用の高級茶道具として評価を高めました。昭和期以降は銀細工を得意とする職人を迎え、銀つまみ付き鉄瓶の名品を次々に世に送り出しています。
金寿堂の鉄瓶は、純度の高い鋳鉄を使用し、砂型鋳造による失蝋鋳造や砂張り鋳造で成形されます。鋳肌は粗く残しつつ、内側は耐蝕性を高めるために浅い鉄釉を施して素焼きし、沸騰音が柔らかく、湯の味がまろやかになる仕上げです。胴部と蓋部の合わせ面は入念に研磨され、隙間なく密着します。
銀つまみは純銀または銀90~95%合金を用い、鋳造後に鍛造打ち出しで形を整えます。花弁を象った「花摘み」や波文を象った「波摘み」など縁起文様が多く、一つ一つを職人が手彫りで細部まで仕上げます。その後、銀黒仕上げ(燻し銀)や磨き出しで陰影を演出し、鉄肌とのコントラストを際立たせます。
形状は丸胴型・平胴型・梅型・瓢箪型など多彩で、容量は500ml前後の小振りから1.5L級の大型まであります。胴部には浅彫りの横縞文や象眼で竹・梅・菊・松の吉祥文をあしらう例も。銀つまみと持ち手金具(銀巻き・銀象嵌)とを組み合わせた豪華仕様が高級品とされます。
鉄瓶底部および蓋裏には「金寿堂」「○代目寿蔵」などの刻印があります。銀つまみ裏にも職人の落款印・屋号刻印が見られ、共箱(桐箱)には作者直筆の箱書きが添えられるのが理想です。書付や仕覆、購入証明書が揃うと来歴が明確となり、市場価値を大きく高めます。
真作鑑定では、鋳肌の自然な凹凸、鋳継ぎ線の消し込み具合、内側釉薬の浮きやムラ、銀つまみの鍛金痕・彫り跡を詳細に観察します。偽作は鋳肌が均一すぎたり、銀部が機械仕上げで痕跡が浅かったり、刻印の字体・深さに違和感がある場合が多いです。
小振りな純銀つまみ鉄瓶(500ml前後)は状態良好なものでも30万~50万円程度。名作家の作品や大型1L超級の豪華仕様は100万~300万円以上が相場です。共箱・仕覆・来歴証明完備の逸品はさらに高値で取引されます。
鉄瓶は錆防止のため、使用後は湯抜きを徹底し、乾燥させたうえで保管。銀部は硫化で燻し変化が生じやすいため、柔らかな布で汗や指紋を拭き取り、銀磨き剤の多用は避けます。直射日光や高湿度を避け、共箱や仕覆で湿気をコントロールすると長期保存に適します。
金寿堂の銀つまみ鉄瓶は、鋳物工芸と銀細工が融合した高級茶道具です。鉄肌と銀のコントラスト、湯音と湯味の良さ、作者の刻印と来歴証明を総合的に鑑定し、適切に保管・手入れすることで、その美術的価値と文化的意義を次世代へ伝えていくことができる逸品です。
鑑定のご相談、
お待ちしております!
多くの士業関係の方からも御依頼を頂いております。お気軽にご相談ください。