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金工七宝細工古銅花瓶は、中国・日本を問わず古代から伝わる銅製花瓶に、七宝(エナメル)装飾を施した希少な工芸品です。素地に用いる古銅の落ち着いた褐色の地肌と、鮮やかな七宝釉薬の対比が美しく、茶席や書斎、邸宅の床の間で用いられることを想定した調度品として制作されました。
七宝技法は中国唐代に発祥し、室町・安土桃山期に堺や堀川で拡大、江戸期には京都・大阪の名工が数多く活躍しました。古銅花瓶本体は、古代遼河文明や唐宋の影響を受けた鋳造技術で作られ、後世の文人趣味と融合して七宝を嵌め込むことで高級装飾品へと昇華しました。
花瓶の素地は鉄分・鉛分を含む古銅合金で、砂型鋳込みによって成形されます。鋳肌は精緻な砂目を残しつつ、打ち磨きで余分な砂粒を取り除くことで独特の風合いを得ます。古銅の材質は経年で自然な緋色や飴色が現れ、七宝とのコントラストを深めます。
七宝装飾はまず銅地に下絵を描き、漆による接着剤を塗布した後、粉状の釉薬を蒔き付けます。乾燥させた後に800~900℃の還元焼成を行い、七宝層を定着。絵付けや金線象嵌を伴う場合は、さらに低温焼成を重ね、色彩の多層性と金銀のアクセントを加えます。
意匠には唐草文、牡丹・蓮華・藤花など吉祥文が多用されます。六角形・八角形、胴部に帯状の文帯を配した構成が典型で、花文を浮き立たせる透かし彫りや金線細工を併用する例もあります。時代や流派による文様の差異が鑑定のポイントとなります。
古銅と七宝は湿気・塩分に弱いので、展示や保管は直射日光やエアコン風を避け、湿度40~60%、温度20℃前後を保つことが望ましいです。洗浄は乾いた柔らかい布で優しく拭き、金属磨き剤や強い洗剤は用いないでください。
江戸~明治期作の古銅七宝花瓶で、保存状態極上・古銅地と七宝層に損傷のない完全品は時価で200万円~500万円。軽微な欠けや焼成ムラがある場合は80万円~200万円、後補の多い復刻品は30万円~80万円が目安です。
金工七宝細工古銅花瓶は、鋳造技術と色絵工芸が結実した骨董品です。銅地の鋳肌、七宝の鮮やかな色釉、金銀象嵌の繊細さ、来歴と状態が価値を決定し、完全な逸品は茶道具や鑑賞具として今後も高い需要を維持することでしょう。
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