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金銅仏「阿弥陀如来像」は、青銅に金鍍金(きんときん)を施した仏像で、平安時代以降の日本仏教彫刻を代表する仏尊です。合掌印または定印を結んだ手勢、蓮台上に安置された坐像形式が一般的で、往生浄土を願う信仰の中心として寺院や個人宅に安置されました。
阿弥陀信仰は平安中期以降、法然・親鸞ら浄土宗・真宗が広めた「念仏往生」の教えとともに庶民に浸透しました。金銅製仏像は鎌倉期の武家寺院や高僧自作像、貴族の私邸用として作られ、信仰対象としてだけでなく権威の象徴としても重用されました。
鋳造は失蜡(しつろう)法が用いられ、まず蝋型を作成して鋳型に埋没し、蝋を溶かし出した空間に青銅(銅85%・錫15%前後)を流し込みます。素銅像を仕上げた後、表面に水銀アマルガムを塗布して加熱し、水銀を蒸発させる金鍍金技法で純金箔を密着させ、柔らかな金色の光沢を得ます。
阿弥陀如来像は、やや細身で柔和な体躯、やや閉じた眼差しの半眼表現、胸前の定印による「説法印」あるいは両手を組む「来迎印」が特徴。蓮華座は複数の蓮弁を繊細に彫り出し、光背(後光)は二重円蓮弁光背や蓮華光背が多用されます。
真作鑑定では、青銅の色調(時代による錫含有率差)、鋳肌(いがはだ)の粗微差、金鍍金層の摩耗・剥落状況を確認します。底部や光背裏の鋳込文字(製作年・窯印・願主名)をルーペで観察し、後補や修復痕の形跡がないか詳細に調べます。
鎌倉期銘の阿弥陀像や高僧自作像は国宝級として数千万円~数億円の評価がつくことがあります。江戸期復刻作や地方制作の小型坐像は数十万~数百万円が相場。保存状態や来歴(寺伝・納入古文書)によって価格は大きく変動します。
金銅像は湿度変化や大気汚染に伴う緑青(ろくしょう)発生、金鍍金層の剥落に弱いため、温度20℃前後・湿度50%前後の安定環境下で保管します。埃は柔らかい馬毛筆で優しく払い、強い化学薬品での洗浄は厳禁です。必要に応じて仏像修復専門家による点検・補修を行ってください。
金銅仏「阿弥陀如来像」は、仏教信仰の深みと中世金工技術の粋を伝える貴重な美術工芸品です。座高や手印、光背の形式を比較しながら集めることで、時代や地域ごとの造形の変遷を楽しむことができます。
金銅製阿弥陀如来像は、失蜡鋳造と金鍍金技法が結実した宗教美術の金字塔です。材質・技法・款識・経年変化を総合的に鑑定し、適切な環境で保存管理を行うことで、その歴史的・美術的価値を未来へと継承できます。
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