金龍堂、龍文堂、鉄瓶2点 買取実績

概要

本品は、日本の名門鋳造所「金龍堂」と「龍文堂」による鉄瓶二点セットです。金龍堂は明治期創業の京鋳物店で、細密な象嵌や高雅な文様が特徴。龍文堂は大正期に大阪で創業し、武骨かつ重厚な鉄肌を活かした実戦用風の鉄瓶を得意とします。両者の鉄瓶は形状も装飾も対照的で、鉄瓶工芸の両極を示す逸品と言えます。

金龍堂鉄瓶の特徴

金龍堂の鉄瓶は、口縁から胴部にかけて鍍金象嵌が施され、唐草や菊花文が金銀糸のように浮き上がります。摘みは蓮華座形、注ぎ口は薄く延ばした「錫口」仕上げ。内側には錫の蒸着処理が施され、茶湯の味や香りを損なわない設計です。

龍文堂鉄瓶の特徴

龍文堂の鉄瓶は、素地の鉄肌を重視した「素地打ち出し」で、あられ文や魚子（ななこ）打ちを大胆に配します。摘みは武骨な珠形、蓋は無地の鉄地に鎚目のみを施すシンプルモダンな意匠。実用性を考慮した太めの把手と深い胴造りが特徴です。

制作技法と素材

両鉄瓶とも砂型鋳造により原形を得た後、鍛金と鎚打ちで仕上げます。金龍堂は細密象嵌のためにロストワックス鋳造を併用し、銀や銅の細線を鋳込みます。龍文堂は純度の高い鋳鉄を使用し、焼成で酸化皮膜を形成、自然な古色を醸成する素地仕上げを得意とします。

骨董的評価ポイント

• 銘印・刻印：底部の「金龍堂造」「龍文堂造」刻印の鮮明さ


• 象嵌・鎚目の精緻さ：金銀象嵌の浮き立ち、魚子打ちの均一度


• 〈鉄肌の質〉：鋳肌の滑らかさ、鎚肌の深さとリズム


• 内面処理：錫蒸着の残存度、錆止め漆の有無


• 保存状態：欠け・ヒビ、外面の緑青進行度


• 来歴資料：共箱、購入証明、旧蔵家書付の有無

市場価格の目安

金龍堂象嵌鉄瓶は保存良好かつ共箱付で150万～300万円、龍文堂素地鉄瓶は50万～120万円が相場。二点揃いでのコレクション価値を考慮すると、合計200万～400万円程度となるケースが多いです。来歴や完品度により、最高値は500万円を超えることがあります。

保存管理と取り扱い

使用後は内外を乾拭きし、内面は乾燥させた後に薄く油を塗布。保存時は湿度50％前後・温度20℃前後の環境を保ち、直射日光や急激な温湿度変化を避けます。金龍堂の象嵌部には磨きすぎに注意し、龍文堂の素地は緑青を景色として一部残すことで風格を維持します。

まとめ

金龍堂と龍文堂の鉄瓶二点は、鋳造技法・象嵌・鎚目・鉄肌・来歴資料の五要素が揃うことで、骨董的価値が最大化します。華麗な金龍堂象嵌と武骨な龍文堂素地が並ぶ姿は、鉄瓶工芸の美意識と実用性の両極を示す逸品として、工芸コレクターや茶道具愛好家から今後も高い評価を受けることでしょう。