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金寿堂(きんじゅどう)は明治期創業の南部鉄器老舗で、伝統の鋳造技法を守りつつ革新を続けてきました。雨宮宗造(あめみや そうぞう、1898–1975)は金寿堂の第三代当主にして名工として知られ、工房の鉄瓶作りを全国的に知らしめた立役者です。
銀摘鉄瓶は、鉄瓶の蓋摘み(つまみ)部分を純銀製とした高級茶道具的意匠品です。鉄肌の渋い黒味と銀の光沢が対比をなし、茶席はもちろんインテリアオブジェとしても鑑賞価値が高い逸品です。
本体は南部鋳物伝統の砂型鋳造で、鉄の純度と砂質を厳選。鋳出後は高温焼鈍とエアブラストで鋳肌を整え、その上で内面に釉薬または錆止めの薬剤を施します。
蓋摘み部分は別誂えの純銀無垢製で、鋳造や鋳込みではなく銀板の鍛金打ち出しまたは彫金加工で形成。純銀刻印と雨宮の作家印が裏面に刻まれます。
本銀摘鉄瓶は、摘みを菊華文や雲龍文など吉祥文様で立体的に彫金し、摘みの形状が蓋の曲線と調和するよう計算されています。摘み台座の銀縁は細かな鋸歯文を配し、蓋縁の鉄肌とも美しく接合します。
本鉄瓶は蓋裏に「雨宮宗造」「純銀」「金寿堂」などの刻印が施され、底部には鋳造工房の刻印があります。刻印の書体と彫り深さは真贋鑑定の重要ポイントです。
真作品は、鉄肌の砂粒跡、焼鈍による微細な結晶構造、銀摘みの鍛金線の揺らぎが自然です。後補品は銀摘みの造形が均質すぎ、接合部の継ぎ目が鋭利になる場合があります。
銀摘鉄瓶は希少性と作家性から高値が付き、状態良好な雨宮作1000cc級で100万~300万円が相場。箱書・仕覆・共箱揃いの完全品はさらに価値が上がります。
鉄瓶は内部に錆を残すと風味が増す一方、銀摘みは硫化によるいぶし銀化を防ぐため、使用後は摘みを乾拭きし、柔らかな布で指紋を除去してください。
本体は湯切りで内部の水気を飛ばし、銀摘みは専用の銀磨きクロスで軽く磨きます。直射日光や高湿度を避け、温度20℃前後・湿度50%前後の環境で保管してください。
銀摘鉄瓶は、鉄肌の質感と銀摘みの彫金意匠を組み合わせた作家物の頂点です。複数点を並べ、摘み文様や鉄肌の表情の違いを比較することで、金寿堂の技術進化を体感できます。
金寿堂雨宮宗造作「銀摘鉄瓶」は、伝統鋳造技法と純銀彫金が融合した茶道具の傑作です。素材・技法・款識・来歴・保存状態を総合的に鑑定し、適切な手入れと保管を行うことで、その歴史的・美術的価値を次世代へと継承できます。
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