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鉄瓶(無銘)は、鉄を主素材とし、伝統的に南部鉄器など地方に伝わる鋳造技法でつくられた湯沸かし器です。作者や銘が刻まれていないものは「無銘」と呼ばれ、産地や時代を絞りにくい反面、その鉄肌や造形の個性、使用痕が魅力となり、骨董品としての評価が高まります。
鉄瓶の起源は江戸時代中期にさかのぼり、中国渡来の南鐐瓶がヒントとなって国内で鋳造技術が発展しました。明治以降に南部地方や越前・京都で製造され、昭和期まで生活用具として広く用いられました。無銘品は、地元の小規模工房や職人個人が制作したものが多いとされます。
主材の鋳鉄は砂型鋳造で成形し、炉中で再焼成。素地を磨き出し、酸化防止のため内面に錫(すず)や銀を蒸着する「水漏れ止め素焼き」を施す場合があります。外面は黒漆や黒染仕上げを行わず、素地の「毛羽立ち」や鋳肌を活かすものが無銘の味わいを生み出します。
形状は丸形・扁平形・筒形など多様で、口縁の反りや脚の有無、摘み(蓋つまみ)の意匠に作者の個性が表れます。無銘品では、鋳造時の気泡痕や湯口の流れ跡が残る場合があり、これらを「鋳込み景色」として評価する骨董愛好家も多いです。
無銘の南部鉄瓶で保存良好なものは5万~15万円程度が相場。江戸期の古手で鋳込み景色の豊かなものや錫蒸着の残る稀少品は20万~50万円以上となる例があります。大振り・装飾的な摘みを持つものは10万~30万円が目安です。
鉄瓶は錆びに弱いため、使用後は内外を完全に乾燥させ、柔らかな布で水気を拭い取ります。保管時は湿度50%以下の環境が望ましく、直射日光や急激な温度変化を避けてください。内面の素焼き素地は研磨せず、茶渋を残すことで風合いが深まります。
無銘鉄瓶は、銘のないゆえに時代や作者を特定しづらいものの、鉄肌の景色や鋳造跡、使用痕が生む「時代景色」が魅力です。造形の均整、内面処理、来歴資料の有無を総合的に判断することで、真の骨董的価値が見えてきます。茶席用や鑑賞用としても愛される逸品です。
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