銀瓶　純銀三越謹製　湯沸 買取実績

概要

純銀三越謹製の銀瓶〈湯沸〉は、百貨店「三越」の最高級オリジナル銀製品として昭和戦前期に製作された逸品です。観賞用を超え、茶席や煎茶席で高級湯沸しとして用いられる実用品骨董としても人気があります。

三越謹製の歴史と背景

三越は明治期以来、西洋文化の紹介とともに高品質次第の銀器や陶磁器を販売しました。昭和初期には自社工房で純銀製の食器・茶道具を企画製造し、三越ブランドの落款を刻んだ銀瓶〈湯沸〉を発表。皇室や華族、政財界の贈答品としても用いられました。

素材と製作技法

本作は銀純度99.9％のスターリングシルバーではなく、さらに純度を高めた純銀（SILVER 999）製。鋳造ではなく鍛造・銀板打ち出しにより成形し、内面は錆止めのためニッケル下地を施し、外面を鏡面仕上げとしつつ、部分的に槌目（ハンマード）仕上げで華やかな光沢を演出しています。

意匠とデザイン

胴部はゆるやかな膨らみを持たせ、肩と胴の境目に刻んだ連続文様（波形・唐草）を鎚起彫金で飾ります。取っ手は銀線をねじって龍骨状に成形。蓋摘みは菊花文をモチーフにした透かし彫りで、細部に至るまで上質感を追求しています。

刻印と来歴証明

底部には「三越謹製」「SILVER 999」「製造年」刻印と、三越の商標コーポレートマークが刻まれ、真作の証しです。付属の共箱には銀製専用桐箱の他、製造証明書と当時の保証書が揃っている個体が最上とされます。

骨董的評価ポイント

• 銀純度と刻印：「SILVER 999」の刻印の有無とメッキ剥がれのないこと。


• 鏡面・槌目の仕上げ：鏡面部の傷・磨耗、槌目部の打痕の規則性。


• 彫金文様の鮮明さ：連続文様の線彫り深度と均一さ。


• 取っ手・蓋摘みの健全性：曲がりや破損、蓋の合口精度。


• 共箱・証明書：三越発行の保証書・共布・共箱の揃い度。

市場価格の目安

共箱・保証書完備の極上品は150万円～300万円。箱なし・小傷ありは80万円～150万円、磨耗や凹みが明確な実用品状態では30万円～80万円が相場となります。

保存と管理

純銀は硫化によるくすみが起こりやすいため、非硫黄系の柔らかな布で定期的に乾拭きし、専用のシルバークロスで磨きます。直射日光・湿気・化学薬品を避け、共箱に防湿剤とともに保管してください。

まとめ

純銀三越謹製の銀瓶〈湯沸〉は、純銀無垢素材と高度な鍛金・彫金技法を融合させた希少な近代骨董品です。刻印と来歴資料の有無、表面仕上げの完成度、保存状態が価値を左右し、完品は茶道具コレクターや銀工芸ファンから高い評価を得ています。