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龍釣り鐘古銅花瓶は、古来より茶室や床の間、調度品として愛用されてきた銅器の一種です。釣り鐘形の胴部に龍を浮彫し、古銅銀化(時代による緑青・銀色の酸化皮膜)をまとった風合いが特徴。花瓶としての実用性と、仏具・儀礼具に由来する荘厳さを兼ね備え、骨董市場でも高い人気を誇ります。
釣り鐘形花瓶は、中国宋〜明時代の寺院用梵鐘を模した器形が日本に伝来し、室町〜桃山期の茶人が茶席用花入として愛用したことにはじまります。特に江戸中期以降、銅器鋳造技術の発達と共に花瓶用途に特化した作品が生まれ、茶道・華道・仏前供花といった用途で用いられました。
本品は釣り鐘の厚みあるすり鉢状胴を持ち、上部には三方孔(吊り輪を通す孔)を配します。胴部中央に龍が縦巻きに浮彫され、火炎文を背景に躍動感を表現。高台部は鐘底を思わせる墳起台形で、安定した据え置き性を兼ね備えています。
青銅(銅:錫=約9:1)を用いて失蝋鋳造で成形。鋳型から出した素地を鏨(のみ)で仕上げ、浮彫文様を整形します。仕上げに硫化処理や火色着色を施し、古銅銀化の深い黒緑色の皮膜を再現。錆止めを兼ねた蜜蝋仕上げを行い、古色を維持します。
真作は、鋳肌に残る鋳型継ぎ目や鋳巣(いがあな)、鏨目のシャープさが自然。浮彫のエッジが鋭く、火炎文と龍の細部まで丁寧に表現されています。後補品は鋳肌が均一すぎたり、浮彫が浅い場合が多く、古銅銀化も人工的ムラが目立ちます。
保存状態・サイズ・文様精緻度・来歴によって変動しますが、江戸期前期作の優品は100万~300万円、宋〜明時代輸入品や特大サイズは500万以上。江戸中後期の俗製品でも30万~100万円前後が相場です。
古銅器は湿気・直射日光を避け、温度20℃前後・湿度50%前後で保管。埃は柔らかな刷毛で払い、蜜蝋仕上げ層を傷めないよう乾拭きに留めます。緑青の過度な進行は皮膜を劣化させるため、専門家による定期的なメンテナンスを推奨します。
形状・文様・銀化色の個体差が楽しめる逸品群として、異なる時代・窯場の作品を比較蒐集すると、銅器鋳造技術の変遷を五感で学べます。茶室飾りや現代インテリアの花入としても、荘厳で趣ある空間演出が可能です。
龍釣り鐘古銅花瓶は、仏具由来の端正な形と龍文の躍動感が融合した銅工芸の名品です。鋳造・鏨仕上げ・古色再現・銀化皮膜を総合的に鑑定し、適切な保存管理を行うことで、その歴史的・美術的価値を未来へと継承できます。
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