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青磁輪花盃(せいじりんかはい)は、外縁が花弁のように波打つ「輪花」形を特徴とする、中国・日本の青磁磁器製小杯です。青磁釉の透明感ある淡い水色と、薄手で軽やかな口縁部の輪花フォルムが上品な美を醸し、酒盃や茶盃として用いられるほか、花生掛けや香合台としても用いられる骨董品として珍重されます。
青磁は宋代(10〜13世紀)中国で発達し、輪花形は同時期の官窯で試作されたのが起源とされます。日本では陶祖・藤原啓宗らが室町期に宋青磁を範とし、輪花形の小盃を高麗・李朝陶磁に学んで再現。江戸期には京焼・薩摩焼・有田青磁など各地窯で輪花盃が生産されました。
盃身は直径6〜9cm程度、高さ2〜3cmの小型杯。外縁の波状リムは5〜8弁で、薄手に仕上げることで軽快感を強調。底部は高台足を付けるか、直接底面を削り出す造形があり、脚の有無や高台の形状が産地や時代を見分ける手掛かりとなります。
釉面は淡い青緑色で、氷裂文様(クラックル)が細かく均一に広がるものが高級品。貫入は使用により茶褐色に染まる経年風合いを楽しむ要素ですが、釉薬の剥落や大きな貫入割れは評価を下げます。釉厚のムラや焼成斑(やきむら)も個体差を鑑賞ポイントとします。
原料には高嶺土や瓷石を主体とし、石英や長石を調合。素地は緻密かつ微細な粒子感を持ち、薄手成形でも強度を保ちます。磁胎の白さや透明感、練込痕の有無で産地や年代を推定できるほか、土味の硬さや音の高低も真贋鑑定に用いられます。
高温還元焼成(約1,250℃)で釉薬中の鉄分が還元し、青緑色を呈します。宋代官窯では龍泉窯が代表ですが、日本では薩摩領内の鹿児島窯、有田の泉山窯、京焼窯が輪花形青磁盃を製作。焼成時の還元・酸化の度合いで釉調が変化し、個体ごとに異なる景色を見せます。
基本は無紋の素朴美を尊びますが、内外面に彫刻や浮彫で蓮華文や鳳凰文を施す例もあります。金彩や銀彩で縁取りを補強した江戸期の加飾品は珍しく、蒐集家の間で希少価値を持ちます。意匠はシンプルながら輪花の柔らかな曲線が装飾性を担います。
酒盃としては、口径の薄さが唇当たりを柔らかくし、酒香を逃がさない浅い杯形が特徴。茶席では抹茶薄茶碗の蓋置き台や水差し台としても用いられ、卓上のアクセントとして軽やかな印象を添えます。実用と装飾を兼ねる多用途性が魅力です。
真作判定では、釉面の貫入パターン、氷裂文の自然さ、釉厚ムラ、磁胎の粒状性を観察。底部の高台削り跡、印刻の有無、共箱の箱書き・年代記載、産地銘や陶工銘が真贋と価値を裏付けます。後世の写しは貫入が均一すぎ、素地の粒子感が人工的な場合が多い点に注意。
宋・高麗各窯の古青磁輪花盃は希少性から数十万〜数百万円規模。江戸期日本青磁写し品は状態・産地・来歴で数万円〜数十万円。共箱・仕覆・箱書・来歴証明が完備した完全品は2倍〜3倍の価格上乗せが期待できます。
磁器は衝撃に弱く、薄手の輪花縁は欠けやすいため、収納時は緩衝材で個別保護。展示時もアクリル台座や専用皿受けを用い、直射日光や急激な温湿度変化を避けます。貫入に溜まった汚れは柔らかな歯ブラシと中性洗剤で優しく洗い、自然乾燥を心掛けます。
輪花盃は形状・釉調・貫入景色の個体差が大きく、コレクターは色合いや輪花の弁数、釉景の美しさを比較蒐集します。宋高麗・明代・江戸期各時代の輪花形変遷を揃えて並べることで、青磁美の歴史が俯瞰できるコレクションとなります。
青磁輪花盃は、輪花フォルムと青磁釉の調和が生む繊細美と実用性を併せ持つ逸品です。素材・成形・釉薬・焼成・貫入・意匠・来歴を総合的に鑑定し、適切に保存管理することで、その歴史的・美術的価値を末長く次世代へと継承できます。
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