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香筒(こうづつ)は、線香や末香を携帯・保存するための小型容器で、茶道具や香道具の一部として用いられます。素材や装飾によって実用性のみならず装飾品としての美的価値が高く評価され、骨董市場では素材・技法・作者・保存状態・来歴の五要素を総合して価値が決まります。
香筒の起源は室町時代の香木輸入に伴う携帯用容器に遡り、江戸時代には香道の隆盛と共に銅製・漆器製・陶磁器製・竹製など多様な形式が生まれました。特に公家・茶人の嗜好を反映した蒔絵や螺鈿、象嵌を施した豪華な作品は茶席や香会で用いられ、明治以降は美術工芸品としても重宝されました。
主な素材は以下の通りです:
- 銅・真鍮:鋳造後に打ち出し、彫金や金銀象嵌で文様を装飾。
- 漆器(木地):木地に砥粉漆下地の上に平蒔絵・高蒔絵・沈金を重ねる。
- 陶磁器:素焼後に上絵付・金彩を施したもの。
- 竹・象牙・角:竹根や角材を彫刻し、表面を研磨・塗装して仕上げる。
装飾技法としては、蒔絵・螺鈿・沈金・象嵌・色絵・金彩などが用いられ、素材の特性を活かした技術が評価されます。
香筒の形状は円筒形が基本ですが、蓋、身、底部の取り合い、摘み(つまみ)の意匠に多様性があります。蓋摘みは珠形・蓮華形・宝珠形などがあり、胴部には松竹梅・流水・琳派風草花・几何文様などが金銀粉や螺鈿で描かれ、携帯性と美しさを両立させています。
無銘実用品級の銅製香筒は5万~10万円、漆器蒔絵や螺鈿装飾の高級品は20万~50万円、象牙や角材の彫刻香筒は30万~70万円程度が相場です。作家物・来歴明確品や人間国宝作例は100万~200万円以上になる場合があります。
香筒は湿度変化や直射日光に弱いため、室温20℃前後・湿度50~60%で保管。埃は柔らかな刷毛で優しく払い、化学薬品や研磨剤は絶対に使用しないこと。漆器は乾拭き、金属部は乾布で軽く拭き、防錆油は必要最低限に留めます。共箱と仕覆を用いて衝撃を避け、展示は短期間に留めることが長期保存の鍵です。
香筒は、作家銘、素材、装飾技法、造形、保存状態、来歴資料の六要素が揃うことで骨董的価値を発揮します。茶席や香席に彩りを添えるだけでなく、日本の工芸技術を今に伝える逸品として、コレクターや茶道具・香道具愛好家から今後も高い評価を受け続けるでしょう。
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