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高橋道八(たかはし どうはち、1900〜1990)は、九州・小石原焼の名門に生まれ、伝統的な技法に独自の解釈を加えた陶芸家です。東京美術学校で油彩を学んだ後、帰郷して高橋家13代を継承。自然釉と手びねりの温かみを重視し、“用と美の融合”を作陶理念に掲げました。
「如意(にょい)」は、その名のとおり仏具の如意宝珠に由来する意匠を陶器で再現したシリーズです。丸みを帯びた頂部から細く伸びる曲線美が調和し、全体に薄青緑色の釉薬がかかることで、穏やかな光沢と微細な鉄分斑が生じます。
素地には小石原の粘土を用い、手ひねり成形後に素焼き。その後、藁灰を主体とした自然釉を掛け、約1,250℃の酸化焼成を行います。還元焼成とは異なる、釉面のマットな質感と斑点状の結晶模様が大きな魅力です。
如意の造形は、轆轤挽きではなく手びねりによるため、わずかな歪みが一点一点に個性を与えます。口縁部は薄手に仕上げられ、手になじむ“手の内”の感触を追求。頂部の宝珠形突起は、仏教美術の吉祥紋をモチーフとしており、工房内で一つ一つ手彫りで仕上げられます。
真作は、底面に「道八」刻印と手書きの墨書があり、刻印の線の太さや深さが年代によって微妙に変化します。釉薬の斑点は自然な発色と結晶模様を示し、均一過ぎるものは後補や模倣の可能性があります。
如意シリーズは希少性が高く、良品は数十万円〜百万円台で取引されます。特に昭和期の初期作品や、個展で発表された限定窯変品は高額落札例があります。近年は自然釉再評価の流れから、更なる相場上昇が見込まれています。
如意は花器や一輪挿しとしても用いられますが、茶席の香合や文鎮代わりに使うコレクション性も高いです。釉の色調や形状の個体差を楽しむため、複数点を並べて鑑賞するコレクターも増えています。
自然釉は貫入(かんにゅう)が入りやすく、湿度差による汚れの浸入が骨董価値を下げるため、展示時は直射日光を避け、湿度50%前後の環境で保管することが望ましいです。表面のホコリは柔らかい筆で払い、洗浄は中性洗剤とぬるま湯で軽く手洗いしてください。
高橋道八の如意シリーズは、伝統技法と現代の美意識を融合させた傑作陶器です。造形美、釉薬技術、手びねりの温かみが調和し、骨董品市場でも高い評価を得ています。鑑定時には刻印と釉面の質感を確認し、適切な保存管理を行うことで、その価値を次世代へと伝えることができます。
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