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高瀬好山(たかせ こうざん、1854~1919)は明治期に活躍した日本画家・文人で、金工や陶芸との交流も深い人物です。自在伊勢海老図(じざい いせえびず)はその代表的な作品で、伊勢海老の躍動感あふれる姿を余白を活かした構図で描き、朱・黒・金泥を配した豪華さと写実性を兼ね備えています。
好山は京都を拠点に俳諧や文人画の伝統を継承しつつ、西洋画や工芸技術を取り入れた革新的作風を展開しました。自在伊勢海老図は茶室床の間用掛軸や襖絵として用いられ、文人趣味と商家の贅を融合させた意匠として明治以降の輸出品にも影響を与えました。
本図は絹本着色で、下地には胡粉(ごふん)の白と岩絵具の彩色が重ねられています。伊勢海老の甲殻は朱絵具に金泥を混ぜ込んで光沢を演出し、脚部の陰影には淡墨を用いることで立体感を強調。細部は細筆で縁取られ、金箔を散らした細蒔絵のような技法も見られます。
画面中央に描かれた伊勢海老は、背を反らせた姿勢で大きく跳ね上がる動きを捉え、左右の余白との対比がリズムを生み出します。殻の節ごとに漆黒と朱色の縞が交互に配され、金泥の煌めきが波打つ水面を想起させ、視覚的なインパクトを与えます。
真作か否かは、絹本の経年変色や胡粉の亀裂(クラック)、金泥の剥落具合を確認します。筆致は緻密かつ生き生きとしており、細部の筆の起筆・収筆に抑揚があることが逸品の証です。裏面の箱書きには「好山筆」「大正期」などの墨書と落款が残り、共箱の木箱に仕覆が付属していれば来歴が担保されます。
好山作自在伊勢海老図の掛軸は、状態が良好で共箱付きのものが骨董市場で数十万円から百万円台で取引されることがあります。特に金泥の色艶が鮮明で、絹裂地に目立つ痛みがないものはコレクターから高い評価を受けます。
絹本作品は湿度・温度変化に敏感で、カビや虫害を防ぐため湿度50%前後・温度20℃前後の安定環境で保管します。掛軸は長期間掛けっぱなしにせず、展示期間を区切って箱に仕舞い、通風と点検を行うことが望ましいです。
高瀬好山の自在伊勢海老図は、文人画の雅趣と明治のモダンな装飾性が融合した希少な美術骨董品です。真贋鑑定には絹本や金泥の質感、筆致の豊かさ、箱書き・落款の検証が不可欠。購入や鑑定を検討する際は、信頼できる専門家の意見を仰ぎ、来歴と保存状態を総合的に評価することをおすすめします。
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