駒沢利斎
こまざわりさい

跡継ぎの早世が相次ぐ中守り続けた駒沢家の歴史


駒沢利斎は、江戸時代から続く指物師の家系で、現在まで代々受け継がれてきた名跡です。指物とは木を組み合わせ、釘などを使わず製作される木工品のことで、茶道具では棗や香合、建水をはじめ多くの種類があります。

京都で初代の宗源が指物を家業としてはじまり、二代目の宗慶が、千利休の孫にあたる千宗旦からの依頼で指物を製作しました。それをきっかけに、駒沢家は茶道に関わり始めます。三代目長慶の婿養子である四代目が、茶道表千家六世である覚々斎から茶方指物師として任命されたと同時に利斎の名を与えられ、初代駒沢利斎となります。以降はその名が代々の当主に受け継がれることとなりました。

七代目駒沢利斎は塗師としても群を抜いており、同じ千家十職の黒田正玄や飛来一閑と一緒に作品を作るなど、精力的に活動しました。約85年と長く生きた七代目は、長老という立場から千家職家をまとめていたため、駒澤家中興の祖と言われています。
その後は若くして亡くなる当主が相次ぎ、十代目が26歳の若さで逝去した後、後見を務めた先代の弟子、岡本喜助の息子が駒沢家の婿養子となって、十一代目を継ぎます。

この十一代目駒沢利斎は、文人画家の富岡鉄斎と親交があり、歴代の中ではひときわ茶の湯に通じました。
十三代目は長寿を全うしたものの、長男に先立たれていたため、十三代目の妻が尼利斎として十四代目を襲名しました。しかし、その後は後継者がおらず、十四代目の甥である吉田氏の息子、吉田博三氏が十五代目を継ぐべく、修行を続けています。

駒沢利斎の作品だと確認する手がかり


駒沢利斎の指物は桐の素材が使われることが多く、そのきれいな木目を活かす木地仕上げが一般的です。桐は、水分を防ぎ熱にも強く、耐久性があります。それゆえに湿度や温度などが季節によって大きく変化する日本の気候に適しており、100年は持つと言われています。ただし、軽くて柔らかいため、ごまかしたり、誰もが簡単に扱ったりすることはできず、細心の技巧や精密さが求められます。

駒沢利斎が作製した指物の種類は多岐にわたります。1780年には千利休がデザインしたり千家が好んでいたりした97点もの茶道具作品を伝える「茶器価録」が発刊されました。この中には、素材が桐だけではなく桑や竹でできた作品も記載されています。表千家九代の了々斎曠叔宗左の時代に記された記録には、駒沢利斎の道具166点が記載されています。

駒沢利斎の作品を買取に出そうとするとき、インターネットなどで似た作品がないか探す方もいるでしょう。確かにオークションなどでも高額で取引されているものが多く存在します。しかし、何代目の駒沢利斎の作品かが明記されているものとそうでないものとがあります。また、茶道の表千家や裏千家の、代々の家元の花押や書付きという情報が書かれていることの方が多く、作者本人の情報が少ないのが現状です。
五代目駒沢利斎が茶道表千家七代如心斎からリ斎の書を与えられたことから、五代目からは箱書などにリの小判印が代々使われています。しかし、それだけでは贋作かどうかを見分けるのは難しいため、もし駒沢利斎の作品が手元にあるなら、詳しい年代や価値はプロの目にお任せするのが確かでしょう。

買取までのお手入れと保管方法


茶道具のお手入れには、細心の注意と長い歳月、受け継がれてきた道具への思いやりが大切です。使用した後のお手入れ方法と保管方法を知っておけば、買取などでその手から離れる日まで、現状を維持することができます。もしも、カビや乾燥によるひび割れなどが発生してしまうと、買取価格が低くなるだけでなく、買取が難しくなる場合もあります。

駒沢利斎の作品にも多く見られる棗は、抹茶を入れる茶器です。棗は洗剤をつけて洗えば洗剤の匂いが染み込んでしまいます。また、水洗いだけでも水分を吸収しすぎたり、せっかくのきれいな漆塗りが変色してしまったりする可能性があるので、柔らかい布で拭くのが適しています。汚れが酷い場合のみ、お湯につけて固く絞った布で拭きとり、仕上げに乾いた布で拭きあげましょう。そして、カビが繁殖しないように湿気から守るため、保管するときは木箱に入れて風通しがよい場所に置いておきます。
建水は、湯通しの後しっかり拭いて、陰干しにします。

緑茶をすくうときに使用する茶杓は、湿度が高すぎず、また乾燥しすぎない環境で保管することが大切です。一方、水指の素材である木地や竹は、乾燥に弱いのである程度の湿度が必要です。ほかにも香合や花入れなど、茶道具にはたくさんの種類がありますが、基本的にはいずれも柔らかい布で拭きます。

そして、湿気に弱いもの、湿気にも乾燥にも弱いもの、そして摩擦や直射日光に弱いものなど、茶道具の特性は様々です。買取を考えるなら、個々の特性に合った対応をし、信頼できる古美術商に出会うまで大切に保管しましょう。

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