黒田正玄(くろだ しょうげん)は、千家十職のうちの1職家で、柄杓師(ひしゃくし)が代々襲名する名前です。三千家の茶道具を作る十職種のうち、柄杓師は柄杓だけでなく、茶杓や台子、香合などの制作を任されています。
今から約450年前から続いている名で、十一代でその名が一度は途絶えかけましたが、十二代正玄とその後見人により、見事復興を遂げた千家十職です。
黒田正玄の号を使い始めた初代や、歴代正玄の功績、その作品の魅力について、解説します。
黒田正玄の系譜
系譜
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生年-没年
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名(号)
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続柄
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初代
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1578年(天正6年)-1653年(承応2年)
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七郎左衛門
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二代目
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1626年(寛永3年)-1687年(貞享4年)
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宗正
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初代の三男
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三代目
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1656年(明暦2年)-1717年(享保2年)
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弥助(号:正斎)
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二代目の長男
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四代目
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1692年(元禄5年)-1778年(享保16年)
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弥吉
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三代目の長男
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五代目
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1708年(宝永5年)-1731年(安永7年)
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才次郎
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養子
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六代目
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1747年(延享4年)-1814年(文化11年)
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弥吉(号:弄竹斎・玄堂)
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五代目の長男
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七代目
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1768年(明和5年)-1820年(文政2年)
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弥三郎・弥吉
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六代目の養子
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八代目
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1809年(文化6年)-1869年(明治2年)
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熊吉・弥吉
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七代目の長男
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九代目
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1837年(天保8年)-1859年(安政6年)
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弥一郎
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八代目の長男
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十代目
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1825年(文政8年)-1900年(明治33年)
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利助
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八代目の婿養子
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十一代目
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1869年(明治2年)-1911年(明治44年)
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熊吉
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十代目の長男
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十二代目
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1906年(明治39年)-1973年(昭和48年)
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久万吉
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十一代目の長男
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十三代目
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1936年(昭和11年)-2017年(平成29年)
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正春
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十二代目の孫
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十四代目
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1967年(昭和42年)-現在
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益代
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十三代目の長女
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五代正玄は、二代目の妻の実家より、四代目の養子に迎えられました。また七代正玄も養子で、徳川家斉や表千家の了々斎などの御用を務めていました。しかし七代目の急死により、八代正玄は、11歳の若さで家督を継いでいます。
九代目は八代正玄の長男ですが、父より先に亡くなり、その記録はあまり残されていません。
八代正玄の早世により、弟子であった利助が十代正玄に襲名しました。
すでに独立していましたが、師匠の急死を受けて、黒田家の後継者となりました。黒田正玄は十一代で存続が危ぶまれましたが、十二代正玄により再建され、現在は十三代目の長女が十四代正玄を継いでいます。
黒田正玄の功績
初代・黒田正玄は、丹羽長重(にわ ながしげ)に仕える武士でした。関ヶ原の戦いにて、西軍に付いた丹羽長重が戦に負けて改易されたため、正玄は剃髪して現在の滋賀県・大津に移り住んで竹細工の職人になったと言われています。
竹細工の職人として技術を得た正玄は、上京して江戸幕府・三千家御用達の柄杓師となりました。
その後も代々徳川家や表千家、裏千家の御用を務めますが、六代・正玄のときに天明の大火が起こります。
1788年に京都市中を焼き尽くした炎は、黒田家やそのほかの千家十職の家屋に大きな被害を与えました。幸いにも、黒田家の倉は被害を免れ、家伝や資料の一部は現在も残っていると言われています。
八代・正玄のときには、明治維新によって将軍家が消滅し、得意先がなくなります。
さらに後継者の不足により存続が危ぶまれましたが、表千家十一代・碌々斎や裏千家十二代・又玅斎、武者小路千家十一代・一指斎の三千家御用達として、家督を守りました。
十二代・正玄のとき、後見人など周囲の力を借り、現当主までその家業を引き継ぎました。
作品の特徴とその魅力
黒田正玄が手掛ける茶道具には、柄杓や茶杓、台子、香合などがあります。茶杓とは、抹茶を茶碗に移すときに使う匙です。台子は、茶器を置くのに使う棚、香合は茶室で香を保存するときに使われる器で、竹で作られています。
竹の伐採から始まり、乾燥させて数年寝かすところから、柄杓師の仕事は始まっています。竹を1本ずつ炭火であぶって油を抜き、竹の自然な美しさを活かして茶道具を作るのが、千家十職に数えられる柄杓師の技術です。曲線を作るときは、火で熱してゆっくりと竹を曲げていきます。微妙な曲線と、削りの作業で制作される竹細工は、職人の人柄が出る作品です。
黒田正玄の名に継がれる繊細な技術は今も健在
黒田正玄は、茶道の家元・三千家御用達の柄杓師です。
千家十職の1つに数えられ、約450年もの間その家業を守っています。
現在の十四代正玄は、初の女性当主で、2017年に逝去した十三代目の長女です。繊細な竹を曲げて削る、黒田正玄の竹細工は、優しい人柄がにじみ出る作品が魅力の1つと言われています。
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