1602年(慶長7年)-1674年(延宝2年)
狩野深幽(かのう たんゆう)とは、江戸時代初期に狩野派として活動した絵師です。
狩野派の中でも特に才に恵まれ、早くから周囲に才能を認められていました。
父は狩野永徳(かのう えいとく)の次男・狩野孝信(かのう たかのぶ)で、安土桃山時代の絵師として活躍した人物です。
狩野探幽も父や祖父の才を受け継ぎ、幼い頃から芸術に触れていました。
今回は、江戸時代の浮世絵で人気を博した狩野深幽の生い立ちと、作品の特徴を解説します。
生い立ち
狩野深幽が生まれたのは、1602年江戸時代初期の京都でした。父は絵師の狩野孝信、母は佐々成政の娘で、安土桃山時代の幕府と深いつながりのある家系です。
狩野深幽の祖父は、安土桃山時代の代表的絵師である狩野永徳。
狩野深幽誕生のときは、すでに死去していましたが、後に狩野深幽の画風に大きな影響を与えることとなります。
江戸時代初期は時代の過渡期にあたり、徳川家へ政権が移りつつある時期でした。
そこで狩野深幽孝信は、息子の狩野深幽を徳川家へ謁見させます。息子の才能を売り込み、狩野派存続をもくろんだのでした。
父の目論見通り、1617年に狩野深幽は江戸幕府の御用絵師になります。わずか16歳のときでした。
1621年からは江戸城を出て、江戸の町を拠点としながら、寺院の障壁画の制作にも携わるようになります。この頃のモチーフは、人物や花鳥などさまざまです。
狩野派とも呼ばれる有名な家系でありながら、当主が亡くなった1623年に狩野深幽は、狩野宗家の後継を弟・狩野安信に譲っています。狩野深幽は鍛冶橋狩野家を立ち上げました。
鍛冶橋狩野家は、江戸鍛冶橋門外に屋敷を持っていたことから名付けられた狩野派の1つです。
狩野深幽には実子がいなかったため養子を取りました。しかし後に、狩野深幽は2人の子宝に恵まれ、実子の狩野守政に継がせています。
狩野深幽は、大阪城や二条城、名古屋城などの名だたる城の障壁画を描きました。特に、名古屋城本丸上洛殿の障壁画は、狩野深幽の技術が確立された作品であると言われています。
自身の様式が確立された後も探求心を忘れず、写生や古画の研究に励みました。大徳寺の障壁画は余白に情緒を含ませ、独自の構図で描いています。
狩野深幽の画風は、狩野派だけでなく以降の絵師に大きな影響を与えました。
祖父・狩野永徳と父・狩野孝信の功績
狩野深幽は、祖父の狩野永徳の作品に深い影響を受けています。
また、父の狩野深幽孝信は幼い狩野深幽を江戸幕府に売り込んで、狩野家の立て直しを図った人物です。
ここでは、狩野深幽の祖父・狩野永徳と父・狩野孝信の功績を紹介します。
狩野永徳
狩野永徳は、安土桃山時代の代表的な絵師です。狩野派として、織田信長や豊臣秀吉の絵師として多くの障壁画の制作に携わりました。
特に、大画と呼ばれるスケールの大きい作品が有名ですが、緻密な描写も得意としていました。狩野永徳の作品は、大胆な構図と豪奢な彩色が特徴です。
狩野孝信
狩野孝信も、安土桃山時代に活躍した狩野派の絵師です。
豊臣秀吉が統一する時代から徳川家へと移る遷移の時期には、長男の狩野深幽を江戸幕府に売り込んだことで知られています。
同時に豊臣秀吉側にも狩野派を付けており、絵師としての実力だけでなく、狩野派を守るための策略が光った出来事でした。
結果、豊臣秀吉が敗れて徳川家へと政権が移ったため、長男の狩野深幽が江戸幕府の御用絵師として活躍する運びとなりました。
作品の特徴とその魅力
狩野深幽の作品は、情緒ある余白と水墨の濃淡が特徴です。特に余白をうまく使い、含みを持たせた作品を多く制作しました。
制作された年代によって狩野深幽の作品は、宰相釆女時代・斎書き時代・行年書き時代の3つに分けられます。
宰相釆女時代とは、狩野深幽が釆女を名乗り始めた1614年から、探幽斎を名乗るまでの期間です。江戸幕府の御用絵師となり、鍛冶橋狩野家を興した時期でもあります。
斎書き時代は、探幽斎の号を授かった時期から行年書き時代までを指します。徳川家康がなくなり、『東照宮縁起絵巻』の制作を行った時期です。
行年書き時代は、当時の絵師にとっての最高位とされる法印を得た1662年から、死没するまでの期間のこと。実績が認められ、絵師としての最も高い地位を得ました。
狩野深幽は古典的な狩野派に独自の技法を取り入れた非凡な絵師
狩野深幽は、狩野派の中でも幼少期から異彩を放った絵師です。わずか16歳で江戸幕府の御用絵師になり、有名な寺院の障壁画を描きました。
描いた作品はたっぷりの余白が作られており、何もない空間にさえ情緒が含まれているのが特徴です。
狩野派の技法だけでなく、土佐派の大和絵や古画なども積極的に研究し、作品に応用したことも知られています。
狩野深幽は当時の絵師はもちろん、以降多くの絵師へ影響を与えた人物です。
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