関根伸夫
せきねのぶお

1960年の終わりから1970年代の半ばまで続いた美術界のムーブメントに、「もの派」と呼ばれるものがあります。

これは石や木といった自然物のみならず、鉄・紙・パラフィンなどの人工物を素材として、それ単体あるいは組み合わせて作品とするスタイルのことです。

素材とその空間そのものを一つの芸術作品とする「もの派」は、いわゆるインスタレーションアートの先駆けといわれることもあります。こうした「作らない」「手を加えない」というアプローチは、人とものとの関係性について再考する哲学性や思想性を見る者に想起させます。そんな「もの派」をリードしてきたアーティストの一人が「関根伸夫」です。

本記事では、公共の空間における芸術作品に深い関心を寄せ続けた美術家、関根伸夫のプロフィールや生い立ち、作品とその魅力についてご紹介します。

プロフィール


1942年(昭和17年)‐2019年(令和元年)

関根伸夫は「もの派」の代表的な作家として国内外で活躍し、特に都市空間に存在するアートの在り方をテーマの一つとして活動した現代美術家・彫刻家です。

屋外に設置したダイナミックな作品には、「もの派」が生まれる契機となったと評される《位相‐大地》があります。

これは屋外の地面に大きな穴を掘り、掘り出した土をその穴とまったく同じ大きさに固めて地上に置くというものです。

また「もの派」の理論的主導者ともいわれる美術家「李禹煥(リ・ウーファン)」とも親交があり、関根の前衛的ともいえる作品を評価したのが李だったといいます。世界各地で個展や展覧会を開き、海外でも高い人気を誇る作家の一人です。

生い立ち


関根は1942年(昭和17年)、埼玉県大宮市(現・さいたま市)に生まれました。

1961年に埼玉県立川越高等学校を卒業し、翌年に多摩美術大学の油絵科に入学。同大大学院の油画研究科を1968年に修了し、同年第1回現代日本野外彫刻展に《位相‐大地》を出品しました。

この作品が李禹煥に注目され、「もの派」誕生のきっかけになっています。またその翌月には長岡現代美術館賞展に出した《位相‐スポンジ》で大賞を受賞しています。

翌年の1969年に東京画廊で初の個展を開催し、1970年にはヴェネツィア・ビエンナーレに出品したことがきっかけで以後2年間をヨーロッパで過ごしました。

帰国後の1973年、「環境美術研究所」を設立。以降も、1978年にはヨーロッパ3カ国への巡回個展、1986年にパリ・ポンピドゥーセンターで行われた「ジャポン・デ・アヴァンギャルド1910‐1970」に参加するなど、欧州方面で精力的に活動しました。

1987年には千葉工業大学キャンパスに「永久の環」を制作。同年、日本国内で「位相絵画展」という巡回展を実施しています。

1994年には横浜美術館・ニューヨークのグッゲンハイム美術館・サンフランシスコ近代美術館で開催された「戦後日本の前衛美術」に参加。

2002年に釜山彫刻プロジェクトに参画し、翌年には川越市立美術館で「〈環境美術〉なるもの‐関信夫展‐」という個展も開かれました。

2005年、国立国際美術館の「もの派‐再考」に参加。2012年にはロサンゼルスの現代アートギャラリー・Blum&Poeの「太陽へのレクイエム:もの派の美術」、次いでニューヨーク近代美術館の「Tokyo 1955–1970: A New Avant-Garde」に参加しました。

日本と欧米を中心に活躍した関根ですが、2019年5月13日、当時居住していたアメリカ・カリフォルニアの病院で76年の生涯を終えました。

関根伸夫作品の特徴とその魅力


関根は多摩美術大学で油絵を専攻していたこともあり、当初はトリックアート的な絵画を中心に制作していました。

しかし彼を一躍有名にした《位相‐大地》は、直径2.2メートル・深さ2.7メートルの穴、そして同サイズの土の円柱というダイナミックなものでした。「もの派」のきっかけになったこの作品を、関根は「思考実験」と表現しています。

また関根はこうした空間とモノとの関係性について思いを馳せるような作品群について、タイトルに「相」を付けています。

《位相‐大地》の他に、白いスポンジ製の円筒に鉄板を乗せた《位相‐スポンジ》やステンレスミラーでできた直方体に自然石を乗せた《空相》などが知られています。

1969年に東京画廊で開催された初の個展では大きな油粘土の塊をそのままの状態で作品として配した《位相‐油土》を出品。観客が自由に手を触れて形を変えられるという、遊び心あふれるものでした。

関根の作品は鑑賞する方にとって、無意識のうちにその「もの」の内に秘められている「何か」を考えさせるようです。

そんな不思議な引力こそが、関根作品の魅力といえるでしょう。

「“位相”のアーティスト・関根伸夫


関根が作品群に名付けた「位相」とは、「位相幾何学」に由来するとされています。

これは空間が連続的に変形しても変化しないという性質を研究する、数学の一つのジャンルです。

関根伸夫というアーティストについて考えるとき、この概念が作品にとって重要な役割を果たしていることにも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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