Menu
かつて高級品として珍重された象牙。仏像、置物、印鑑、根付などの工芸品としても人気があり、自宅の整理や遺品整理で「象牙らしきものが出てきた」というケースも少なくありません。しかし、象牙と聞くと「違法では?」「売るのはダメなのでは?」と不安を感じる人も多いでしょう。
結論から言えば、一定の条件を満たせば、象牙の買取は合法的に可能です。ただし、国内取引には厳格なルールが定められており、何の準備もなく売却することはできません。このコラムでは、象牙の売却に必要な法律知識と、実際の市場価格の傾向、安心して買取を進めるための手順を解説します。
象牙の取引については、国際的にも国内的にも厳しい制限があります。日本では「種の保存法」および「ワシントン条約(CITES)」に基づいて、象牙の取引に関する管理が行われています。
現在、原則として象牙の海外取引(輸出・輸入)は全面禁止されています。ただし、日本国内での取引は、個人所有のものであり、かつ適切な登録がされている場合に限り、一部例外的に認められています。
象牙を売却するには、「特定国際種事業者」による取り扱いが必要であり、象牙製品には「登録票」の提示が義務付けられているケースが多くあります。特に、原木や一本牙といった象牙そのものは、登録なしでは一切の売買が禁止されています。
小物(印鑑・彫刻品など)であっても、製品の種類や重量によっては登録が必要になる場合があるため、事前の確認は欠かせません。
象牙の「登録票」とは、環境省が発行する公式な書類で、その象牙が合法的に国内流通してきたものであることを証明するものです。この登録制度は、不正な密輸品や違法取引を防ぐために設けられています。
登録票がある場合、買取業者に提示することでスムーズに取引が進みます。逆に、登録票がない場合には、まず登録申請手続きを行わなければなりません。環境省の「自然環境研究センター」を通じて申請できるようになっており、申請には写真・寸法・重量・来歴などの情報提出が必要です。
この手続きに数週間〜1か月ほどかかるため、象牙を売却する予定があるなら、早めの対応が望ましいといえます。
象牙の買取価格は、「素材としての象牙の質」「加工の精度」「重量」「状態」「希少性」などをもとに判断されます。純粋な象牙の素材価格は1gあたり数百円〜1,000円前後が相場ですが、工芸品としての価値が加われば数万円〜数十万円の査定がつくこともあります。
たとえば、名工による細密彫刻が施された根付や置物は、美術品としての価値が上乗せされ、保存状態が良ければさらに高額で取引される可能性があります。反対に、黄ばみやひび割れ、欠損がある場合は減額の対象となるため、保管状態も査定に大きく影響します。
ただし、登録票がない象牙については、どれほど価値があっても「売れない」という点を改めて強調しておく必要があります。
象牙を安心して売却するためには、必ず「特定国際種事業者」の許可を持つ買取業者を選ぶことが大前提です。この登録を受けていない業者は、象牙の取り扱いが法的に認められていません。
多くの場合、骨董品や美術品を専門に扱う買取業者の中に、象牙の取り扱いに精通した業者がいます。公式サイトに「象牙の登録事業者番号」が明記されているか、環境省の公開リストに掲載されているかも確認しましょう。
また、事前の査定依頼時に、登録票の提出を求めてくる業者であれば、法令遵守の意識が高く、信頼できる傾向があります。対面での説明が丁寧で、査定額の根拠をきちんと示してくれるところを選ぶと、取引の透明性も高まります。
象牙はただ古くて高級そうな素材というだけでなく、国際的な絶滅危惧種に関わる資源であるため、売却には慎重な手続きと理解が必要です。登録票をしっかりと確認・準備した上で、信頼できる登録業者に査定・売却を依頼すれば、合法的かつ適正価格での取引が可能になります。
遺品整理や蔵出しで見つかった象牙製品をそのまま放置しておくのではなく、正しい知識をもって対応することで、その価値を失わずに次の世代へつなぐことができます。売却を検討している方は、まずは登録の有無を確認し、専門業者に相談してみるところから始めましょう。
鑑定のご相談、
お待ちしております!
多くの士業関係の方からも御依頼を頂いております。お気軽にご相談ください。