土田友湖
つちだ ゆうこ

土田友湖(つちだゆうこ)は、千家十職のうちの1つである袋師の号です。
茶道具を入れる袋や、帛紗(ふくさ)を作る職人で、初代が表千家から友湖の号を贈られたことから、代々、土田友湖の号を名乗るようになりました。当主のうちは半四郎を通称として使い、隠居後に友湖の号を襲名します。

千家十職に数えられる土田友湖の作品は、華やかで繊細。中に入れる茶道具を邪魔せず、かつ茶道の場にふさわしい品格ある作品が魅力です。
ここでは、土田友湖の号を名乗るようになった経緯と、その作品の魅力を解説します。

土田友湖の系譜




系譜

生年-没年



続柄

初代
土田友湖

1687年(元禄2年)-1765年(明和2年)

友湖・不染斎



二代目
土田半四郎

1736年(享保17年)-1757年(宝暦7年)

友湖・了円

初代の子

三代目
土田半四郎

1746年(延享4年)-1784年(天明4年)

友湖・一得斎・友甫

初代の甥

四代目
鶴寿院貞松

1719年(享保4年)-1801年(享和元年)

友湖

二代目の姉

五代目
土田半四郎

1778年(安永8年)-1825年(文政8年)

友湖・伸定・蓮乗

三代目の長男

六代目
土田半四郎

1803年(文化元年)-1883年(明治16年)

友湖

五代目の子

七代目
土田半四郎

1835年(天保6年)-1911年(明治44年)

友湖・聴雪

六代目の養子

八代目
土田半四郎

1861年(文久元年)-1911年(明治44年)

友湖・淡雪

七代目の婿養子

九代目
土田半四郎

1892年(明治25年)-1914年(大正3年)

友湖

八代目の長男

十代目
浄雪院妙要

1859年(安政6年)-1940年(昭和15年)

友湖

七代目の長女

十一代目
土田半四郎

1902年(明治35年)-1965年(昭和40年)

友湖

八代目の三男

十二代目
土田半四郎

1939年(昭和13年)-現在

照雪友湖

十一代目の次男

十三代目
土田半四郎

1968年(昭和43年)-現在



十二代目の長男


四代目・土田友湖は二代目の姉、つまり初代の娘です。二代目を継いだ弟、二代目の養子である三代目が相次いで亡くなったことから、四代目に襲名しました。他の千家十職と同様に、1788年1月30日に発生した天明の大火によって、家屋を焼失。
その後、復興させた人物でもあります。
六代目は、天明の大火による焼失で失った、家伝の書物の整理に着手しました。しかし、1864年8月20日に起きた、禁門の変により、市街戦に巻き込まれ、再び家屋や家伝をなくすことになります。
養子で土田家の後継ぎとなった七代目が亡くなると、八代目、九代目と相次いで亡くなり、七代目の長女が十代目を継ぎました。現在、土田友湖の号は、十三代目まで引き継がれています。

土田友湖の功績


初代・土田友湖は、彦根藩主に仕える、鉄砲組頭の家柄の跡取りとして生まれました。しかし、継母の子が家業を継ぐことになり、土田友湖は家を出て、西陣織の問屋になります。

転機は、袋師である亀岡宗理に、師事するようになったことです。袋の仕立て技術を得て、亀岡宗理の家業を継ぎました。その技術が、表千家6代の覚々斎(かくかくさい)の目にとまり、茶道具の袋師となりました。

表千家とは、茶道の流派の1つで、千利休の家督を引き継ぐ本家家元です。
この表千家と裏千家、武者小路千家の三千家が使う茶道具などを作る職人の家柄を、千家十職と呼びます。初代は、表千家七代の如心斎(じょしんさい)により、友湖の号をもらいました。
五代目・半四郎のころから、帛紗も作り始めます。帛紗とは、茶器を拭うときに使う布です。
素材には絹が使われることが多く、表千家では、女性は朱色、男性は紫色と決まっています。女性が朱色なのは、口紅が付いても、目立たないためと考えられています。

第二次世界大戦により、茶道は存亡すら危うくなり、当時の当主であった十一代目も召集を受けました。現在の当主は十三代目で、十二代目の長男です。

作品の特徴とその魅力


土田友湖の作品には、仕覆(しふく)や帛紗、角帯などがあります。仕覆とは、茶入や茶碗などの茶道具を入れる袋のことです。仕覆には、裂地(きれじ)と呼ばれる生地を使います。裂地には、金箔を用いた金襴(きんらん)や、銀糸を使う銀欄、光沢のある緞子(どんす)など、さまざまな織り方があります。

仕覆や帛紗は、茶道具を入れる目的だけでなく、それ自体が使う人の格式を表しており、身分に相応しい袋を使用するのが習わしです。土田友湖の作品は、茶道具の存在を損なわず、なおかつ華やかで格式高いデザインをしています。

家元の茶道具を引き立たせる袋師・土田友湖


土田友湖は、千家十職に数えられる袋師の職家の1つです。天明の大火や禁門の変、太平洋戦争など、数々の苦境を受けながらも、現在の当主・十三代目までその号を引き継いできました。

初代・友湖は、表千家に見出されたことにより、茶入を包む仕覆を作るようになりました。その後、四代目までは主に仕覆を制作していましたが、五代目からは帛紗も作るようになり、現在に至ります。華やかで美しい裂地は、名物裂とも呼ばれ、大変貴重な作品です。

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