朝鮮美術　李朝鉄絵一輪挿し 買取実績

朝鮮美術 李朝鉄絵一輪挿しの骨董的価値と魅力

1. 李朝時代の陶磁器文化

李朝時代（1392年〜1897年）は、朝鮮半島における陶磁器文化が最も発展した時代の一つです。この時代には、白磁、青磁、鉄絵など多様な技法が発展し、日本や中国にも影響を与えました。特に鉄絵（てつえ）技法は、酸化鉄を用いた装飾技法であり、鉄絵一輪挿しには、簡潔でありながらも力強いデザインが特徴的です。

2. 鉄絵技法とは

鉄絵とは、酸化鉄を用いた絵付け技法であり、焼成後に黒褐色や茶褐色の発色が得られることが特徴です。李朝時代の鉄絵技法は、簡素でありながらも大胆な筆致が魅力であり、草花や幾何学模様が多く描かれました。特に一輪挿しのような小品には、茶道具や花器としての用途が重視され、装飾性だけでなく実用性も兼ね備えた作品が多く制作されました。

3. 李朝鉄絵一輪挿しの特徴

（1）形状と造形

李朝鉄絵一輪挿しは、比較的小型の花器であり、丸みを帯びた形状が特徴です。胴部は膨らみを持たせながらも安定感のある形状で、高台部分はやや広めに作られています。口縁部はやや狭く設計され、一輪の花を挿すのに適したデザインとなっています。

（2）鉄絵の装飾

• 草花文様：菊や梅などの草花が簡潔に描かれる。


• 幾何学模様：波紋や縞模様などが施されることも多い。


• 墨色の発色：焼成温度や釉薬の種類により、黒褐色や茶褐色に発色する。

（3）釉薬と質感

李朝鉄絵一輪挿しには、白磁や青磁と異なり、ややざらついた手触りが感じられます。釉薬は半透明または乳白色のものが多く、素朴な風合いが強調されています。鉄絵部分は釉薬の下に施されているため、表面が滑らかでありながらも、絵柄が立体的に浮き上がるような効果が生まれています。

4. 骨董市場における評価

（1）製作年代と評価

李朝時代の陶磁器は、その製作年代や窯の出自によって市場価値が大きく異なります。特に16世紀から17世紀にかけて制作された鉄絵一輪挿しは、保存状態が良好であれば数百万円単位で取引されることもあります。さらに、宮廷用の品や高級な茶道具として制作された作品は、その希少性からさらに高額で取引されることがあります。

（2）真贋判定のポイント

• 高台の形状：李朝時代の鉄絵一輪挿しは、高台部分がしっかりと整形されており、底面に製作時の指跡が残ることが多い。


• 鉄絵の筆致：草花文様や幾何学模様の筆致が自然で、流麗な線が特徴。


• 釉薬の質感：釉薬が均一でありながらも、経年による貫入やひび割れが自然に発生している。

（3）保存状態の重要性

李朝鉄絵一輪挿しは、焼成時の釉薬の剥離や経年による割れ・欠けが発生しやすい作品です。保存状態が良好であり、鉄絵の色彩が鮮明に残っているものは市場価値が高まります。また、底部の高台部分に欠けが無く、釉薬の光沢が均一に残っているものが高額取引の対象となります。

5. 市場価格の目安

• 16〜17世紀の李朝鉄絵一輪挿し（保存状態良好）：300万円〜600万円


• 18世紀の作品（草花文様・保存状態良好）：150万円〜300万円


• 19世紀後期の作品（復刻品・共箱付き）：50万円〜100万円


• 現代の復刻作品：20万円〜50万円

6. 現代における評価と需要

現代の骨董市場においても、李朝鉄絵一輪挿しは根強い人気を誇ります。特に日本国内の茶道具市場や韓国の古美術市場では、李朝陶磁器への関心が高まっており、高額で取引されることが多くなっています。また、欧米市場でもアジア美術品としての評価が高まり、オークションでも高額落札が相次いでいます。

7. まとめ

李朝鉄絵一輪挿しは、朝鮮半島の伝統陶磁器の中でも特に独特の風合いと趣を持つ逸品です。製作年代や保存状態、鉄絵の筆致の繊細さが市場価値を決定するポイントであり、16世紀から17世紀の作品は数百万円単位で取引されることもあります。現代においても、その素朴でありながらも力強いデザインが国内外のコレクターの間で高く評価されており、今後もその需要と市場価値の上昇が期待されます。