京名所蒔絵　菓子盆 買取実績

京名所蒔絵菓子盆の概要

京名所蒔絵菓子盆は、京都の名所風景を金銀の蒔絵で描いた菓子盆で、茶席や歳時の饗応に用いられる漆器工芸品です。絵柄には金閣寺、銀閣寺、祇園祭の神輿、嵐山の竹林などが多く選ばれ、京都の風情を食卓に映し出します。

歴史的背景と用途

菓子盆は平安時代に貴族の饗宴で菓子を載せる盆として始まり、桃山～江戸初期に蒔絵技法が確立。京蒔絵は御所御用・公卿家の注文で発展し、明治以降は観光土産や記念品としても制作されました。現在も茶道や和菓子屋の演出に欠かせない道具です。

素材と下地処理

主素材は木地（桐・栓など）に砥の粉漆下地を幾重にも塗り重ね、研ぎ出しで平滑に仕上げます。その上に黒漆または溜漆を塗布し、深い艶と耐久性を確保。下地の厚みが蒔絵定着の鍵を握ります。

蒔絵技法の特色

平蒔絵・研出蒔絵を併用し、金粉の粒度を使い分けて遠近感を演出。細部には箔押しや切金を加え、屋根瓦や鳥居の輪郭を際立たせます。研出蒔絵では背景を研いで漆面を浮かび上がらせ、名所の立体感を表現します。

意匠と図柄のバリエーション

代表図柄には四季折々の京都名所があり、桜咲く清水寺、紅葉の東福寺、雪化粧の金閣寺など、季節と組み合わせることで客をもてなす趣向が凝らされます。一対揃いで四季を巡るシリーズも多く作られています。

真贋鑑定のポイント

真作は地粉漆の研ぎ跡が微妙に残り、金粉が一粒ずつ自然に散らされます。図柄の線に揺らぎがあり、蒔絵下地の透けや研出し面の凹凸が均一すぎないことが本物の証。裏底の刻印や朱書箱書も重要な来歴資料です。

市場価値と価格帯

京名所蒔絵菓子盆は状態・図柄・時代・作家で価格が変動し、無銘一般品は数万円〜十万円、名工・作家物や古作は数十万〜百万円超。共箱・帛紗包み・来歴書付の完全品はさらに価値が上がります。

保存・手入れの注意点

漆器は直射日光・高温多湿を避け、湿度50％前後・温度20℃前後の安定環境で保管します。使用後は柔らかな布で乾拭きし、化学薬品や硬いスポンジは厳禁。蒔絵面は馬毛筆で埃を払うのみとします。

鑑賞と演出のコツ

茶席で菓子を盛る際は、盆の向きを客の位置に合わせ、名所図を正面に見せることで会話のきっかけになります。季節の和菓子と図柄をリンクさせると、趣深いしつらえが完成します。

まとめ

京名所蒔絵菓子盆は、蒔絵技法と京都風景の美意識が融合した工芸品です。素材・技法・図柄・真贋要素・来歴・保存状態を総合的に鑑定し、適切に取り扱うことで、その歴史的・芸術的価値を末永く継承できます。

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