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とっくり型花瓶(徳利形花瓶)は首が細く胴がふくらむ古典的な形状で、花を活ける実用性と均整の取れたプロポーションが魅力です。十三代酒井田柿右衛門(1906–1982)は濁手(乳白色の素地)復元などで知られ、彼の手になるとっくり型花瓶は柿右衛門様式の落ち着いた色調と絵付けの美しさを備えます。
柿右衛門様式は乳白の余白を生かした非対称の構図、暖色系の赤や緑を主体とする色絵で知られます。十三代は十二代とともに濁手の製法復元に成功し、乳白地に鮮やかな上絵がのる特有の景色を現代に甦らせました。とっくり形の細首部分は絵付けの主題を強調するための余白を作りやすく、全体の均衡が評価対象になります。
鑑賞では口縁の薄さ、肩から胴にかけての丸み、釉調の均一さをまず見るべきです。絵柄は花鳥・草花・山水などが多く、筆致の流れ、赤絵の盛り具合、金彩の使用の有無が作行きを示します。濁手素地特有の柔らかい乳白色と上絵の色彩の馴染み具合が良品の目安です。
重要なチェックは底裏の款識・銘、素地の質感、釉の掛かり方、絵付けの筆遣い、経年の自然なヤケや貫入の有無です。箱書や共箱、展覧歴があれば来歴証明として高く評価されます。近年の復刻品や模倣は署名の形や釉肌の均一さで見分けられることが多く、刻印や箱だけで判断せず実物の土味と絵付けを重視してください。
磁器は急激な温度変化や衝撃に弱く、とくに細首部は割れやすいので取り扱いに注意が必要です。洗浄は中性洗剤で手洗いし、擦り傷や研磨は避ける。箱・仕覆・箱書は来歴資料として必ず保管してください。
十三代の作は濁手復元の功績もありコレクター評価が高く、来歴が明確で保存良好なとっくり型花瓶は安定した需要があります。無銘や現代復刻は価格が抑えられる一方、署名・共箱・良好な釉景を備えた個体はオークションや専門店で高値をつける傾向があります。
査定・出品時は高解像度の全体写真、底裏の拡大、口縁・高台・絵付け部分のアップ、寸法・重量、箱書や購入履歴を揃えてください。修復歴がある場合は必ず明示し、疑義があれば実見鑑定を依頼することが安全です。
十三代酒井田柿右衛門のとっくり型花瓶は、濁手素地と柿右衛門様式の上絵表現が結実した工芸骨董です。鑑定は「素地(濁手)の質感・絵付けの筆致・款識・来歴・保存状態」を総合的に評価することで行い、適切な保存と来歴の提示が価値維持に直結します。
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