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十三代・酒井田柿右衛門作の「慈母観音」置物は、有田焼の名門窯が伝統技法で仕上げた色絵磁器の立像で、柿右衛門様式の上品な色彩と柔らかな造形美を備えた骨董品です。作家名や共箱が明示される個体は資料性も高く、茶席飾りや床の間の調度としても評価されます。
酒井田柿右衛門家は有田焼の大名跡で、十三代は近代の柿右衛門様式を受け継ぎつつ独自の釉調・絵付けを展開した世代の一つです。濁手や色絵の表現、上絵の色調と余白の取り方が評価軸になります。
慈母観音は母性性・衆生救済を象徴する観音像で、仏教的な安寧や家内安全の願いを込めて制作されることが多いです。有田焼の置物としては慈愛に満ちた表情や衣文(衣の表現)の表現力が鑑賞点となります。
磁胎は有田特有の細かい白磁地で、素地の薄さ・口縁や台座の仕上げ、色絵の重ね(赤・緑・黄など)ののり具合が技術評価に直結します。上絵は高温焼成後の上絵付けで仕上げられることが多く、金彩の使用有無も価値に影響します。
鑑定時は(1)底裏の款識・窯印、(2)共箱・箱書の有無と筆者、(3)素地の土味(透光性や練り具合)、(4)上絵の筆遣いと盛り上がり、(5)金彩の経年状態を総合して判定します。写真だけで判断が難しい場合は実見鑑定が必須です。
貫入・ニュウ(ひび)・欠け・埋め直し(後補)は価格に直結します。上絵や金彩の剥落、台座の接着痕などはマイナス要因となるため、自然な経年変化と修復痕を区別して記録することが重要です。:
同作や類似の柿右衛門置物はオークションや美術商で実例があり、作年代・サイズ・来歴・状態で価格幅が大きく変動します。実際に十三代の立像が取引に出た事例やオークション履歴が確認されているため、類例と照合して相場を把握すると良いでしょう。
売却時は高解像度の全体写真、底裏(款識)のクローズアップ、胸像・顔・衣文・台座の拡大、寸法・重量、共箱や購入証明を必ず揃えてください。来歴や共箱が揃うと査定額は大きく上がります。
顔の表情や衣の陰影、釉の光沢を正面と斜めの光で見せると立体感が伝わります。展示は直射日光・高温多湿を避け、台座は安定した平面を選ぶことが推奨されます。
十三代柿右衛門の慈母観音置物は、柿右衛門様式の美意識と有田磁器の技巧が結実した工芸骨董です。真贋判定は款識・箱書・素地・筆致・保存状態を総合して行い、売買時は来歴と高精細画像を用意して専門家に照合してもらうのが安全です。
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