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十四代 酒井田柿右衛門による濁手紅葉文花瓶は、柿右衛門窯の伝統的な色絵表現と濁手(にごしで)という乳白色を帯びた素地の美が融合した代表的な作品です。紅葉図は季節感と和の情緒を強く象徴し、花瓶としての実用性と工芸作品としての鑑賞価値を兼ね備えます。
濁手は磁胎の表面に乳濁した釉調を与える技法で、光を柔らかく拡散させるため上絵の色がやわらかく浮かび上がります。十四代の濁手は色調の均一さと厚みの制御が巧みで、紅葉の朱や緑が奥行きをもって見える点が魅力です。
とっくり型や肩丸型など用いられる胴形は、口縁の薄さや首の繊細さ、胴の張りのバランスが重要です。十四代は伝統に則しつつもモダンなプロポーション感覚を持ち、視覚的な重心と余白の取り方に優れています。
紅葉図は葉の形や葉脈、枝の運びで季節感を示します。筆致は抜きと止めを効果的に用い、朱の濃淡や黄味を含んだ赤の重ねで深みを出します。金彩の差しや余白の扱いも作行きの評価点です。
真贋鑑定では底裏の款識、窯印、素地の練り具合、釉の掛かり方、絵付けの筆致と色ののりを総合的に確認します。共箱や箱書、購入記録が残っていれば来歴として評価が高まります。
磁器は衝撃や急激な温度変化に弱いため、取り扱いは慎重に行います。上絵や金彩は摩耗しやすいので直接擦らないこと。共箱や仕覆は来歴資料として必ず保管し、展示は直射日光を避けて行ってください。
割れや欠けの補修は価値に影響します。接着や補填は可逆性の高い方法で専門家に依頼することが原則で、過度な再仕上げや全体の再彩色は避けるべきです。
十四代の濁手作品は需要が高く、来歴・保存状態・作品サイズや図様の魅力により価格差が出ます。共箱・箱書が揃った良品は市場評価が高く、類例の落札事例を参照して相場を把握するのが有効です。
鑑賞時は全体のプロポーションに加え、乳白地と上絵の色層、筆遣いのニュアンスを近接して観察してください。光を当てる角度によって濁手の柔らかさが際立ち、紅葉の表現が豊かに見えます。
査定に出す際は高解像度の表裏・底裏・口縁・絵付け部分の拡大写真、寸法・重量、共箱や購入時の書類を用意してください。修復歴は必ず開示し、疑義があれば専門家の実見鑑定を依頼することを推奨します。
十四代酒井田柿右衛門の濁手紅葉文花瓶は、濁手の柔らかな地合いと紅葉文の色彩が調和した工芸品です。真贋・価値判定は素地・釉調・絵付け・款識・来歴・保存状態を総合して行い、適切な保存と記録が長期的価値保持に不可欠です。
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