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清水卯一(しみず ういち、1915–2005)は、滋賀県信楽町に生まれ、人間国宝・轆轤(ろくろ)挽きの名手として知られる陶芸家です。東京美術学校(現・東京芸大)で日本画を学んだ後、父・清水卯作の轆轤技術を継承。やきものに描画・彩色を取り入れる独自の表現を追求し、釉下彩や化粧土、下絵付け技法など多彩な技を組み合わせた作品群を生み出しました。
清水卯一の茶器は、抹茶碗、茶入、建水、振出(ふりだし)など多岐にわたります。素地は信楽土を主に用い、温かみのある生成色の上に、筆跡を残したような自由な文様が施されるのが魅力です。釉薬は灰釉、鉄釉、透明釉など複数を重ね、窯変(ようへん)による偶然の発色を生かした多彩な色調が楽しめます。
轆轤成形における清水卯一の技は、薄手でありながらしっかりと立ち上がる口造りと、安定感のある高台のバランスに特徴があります。茶碗の胴部はゆるやかなカーブを描き、手取りの感触が心地よい“手の内”を意識したフォルムになっています。高台の削りや削り跡を残す仕上げも、作家の個性を物語るポイントです。
清水卯一は文様付けにおいて、釉下彩や化粧土引き、掻き落としなどを駆使。抽象的な線描や点描、植物画のモチーフなど、絵画的要素を大胆に取り入れることで、従来の茶器とは一線を画す造形美を実現しました。特に灰釉の下に線描を施す「灰釉下絵付」は、色の深みと筆致の鮮やかさが同居する技法として評価されています。
1985年、清水卯一は「陶磁器轆轤成形技術」により国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。轆轤挽きの精緻さと絵付け技の両立は高く評価され、茶器以外にも花器や茶碗、食器など幅広い作品が国内外の美術館・コレクションに収蔵されています。
真作を見分けるには、底部の「卯一」銘と落款の筆跡の特徴を確認します。高台内側の削り跡や轆轤跡の滑らかさ、釉薬の厚み・窯変の自然さも重要です。また、化粧土層の厚みや発色、筆致の強弱が均一すぎない“人の手”を感じられるかどうかが、真贋鑑定の大きな手がかりとなります。
清水卯一の茶器は市場で高い評価を受け、抹茶碗は良品で数十万円、稀少な初期作品や人間国宝指定後の作品は百万円を超える取引例もあります。仕覆や共箱(桐箱)の有無、来歴(リビングヒストリー)が価格に影響し、付属品が完備しているものほど評価が高まります。
清水卯一の茶器は、轆轤技術の精密さと絵画的装飾の融合が唯一無二の存在感を放ちます。手に取るたびに温かみを感じさせ、茶席を彩る茶碗としてだけでなく、インテリア・オブジェとしても人気が高いです。限定的な制作点数と逸話が、コレクター心をくすぐります。
素地と釉薬の境目に微細な貫入(かんにゅう)が現れることがあり、経年変化として風格とされますが、強い衝撃や急激な温度変化を避けることが重要です。高湿度下では貫入に汚れが入りやすいため、乾いた柔らかい布で優しく拭き取り、直射日光やヒーター直下を避けた環境で保管してください。
清水卯一の茶器は、伝統技術と芸術性が高次元で融合した逸品です。轆轤成形の美しさ、釉下彩の繊細な表現、化粧土技法の多様性が評価され、骨董品市場でも高い人気を誇ります。購入や鑑定の際は、銘・落款の筆跡、轆轤跡、窯変の自然さをチェックし、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。
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